ねむりの部屋 Vol.8 上質であること

先般、日本睡眠環境学会の学術大会に参加した時のこと、発表の中で「快適な睡眠には、上質な寝具を使うことが必要だ」という意味の文章があって、はたとそこで考え込んでしまった。

実は私も「上質な眠り」とか「上質な自然素材を使って」という言葉をしばしば使っている。眠りの質は主観的にも客観的にも評価できる手法が整っているので良いとして、睡眠を科学的に解決しようという学会で「上質な寝具」という言葉でくくってしまうのは、いかにも横着な気がしたからである。

確かに質の良いものはある程度評価できる。羽毛であれば、ダウンパワーやファイバーの混率、洗浄のレベルなど、素材の良さを評価する方法はある。生地もしかりなのだが、単純にスペックだけを追い求めると、必ずしも期待通りの結果とはならないことがある。例えば、生地は細番手で打込みが良いほど上質とされる。ところが打ち込みが良すぎると、生地としては良くても、布団としては良くないことが多い。

寝具に限らないが、質の高さはある種の感性バランスが必要なのだと思う。寝具は単なる性能表示だけでない、官能性の良さというものが求められるのだ。その感性は一人一人微妙に異なって相性というものが存在する以上、快適で気持ちが良い上質な寝具というものは、性能を確保しつつも、素材の良さを選ぶ感性と、お客様が使って快適と感じる感性を合わせてお勧めすることが重要となる。

かつて、日本睡眠環境学会で寝具の性能表示を制定しようとする動きがあったが、私は反対の立場を取った。性能だけで睡眠が向上するのならいいが、それだけで解決は到底無理だと理解していたからである。

上質な眠りを得ること。私たちの仕事は、お客さまと手探りでの共同研究でもある。

ねむりはかせ       沢田昌宏