ねむりの部屋 Vol.2 夢(ゆめ)か、現(うつつ)か、夏の夜の夢

日本の夏は蒸し暑い。湿気が多いから不快指数はぐんぐん上がる。夜はなかなか寝付けない。寝付いても眠りは浅く、意識は夢と現実を行き帰りする。気がつくと朝で、褥は汗でびっしょりとなる。頭はぼーっとして、寝たのやら寝てないのやらはっきりしない。快適に眠れる環境は温度33度湿度50%というから、冷やすことより、湿気を下げる工夫が必要となる。

そんな夏を快適に過ごすために、日本の家は床を上げ、床下に空気の流れを作ってきた。平安時代の寝殿造には、川を邸宅に引き入れているが、眺めだけでなく快適に過ごすためのものでもあったのだろう。

夏は麻の蚊帳を使い、外の風を引き入れて麻生地のちぢみの夏布団で眠る。麻は熱を逃し、吸湿発散が良いので、風があると気化熱を奪って心地よさを生み出すことができる日本の風土にあった素材だ。古来より、上布と呼ばれたものは麻織物だった。その上布を加工して独特のしぼを作ったものが、近江ちぢみとよばれる地元の特産品である。凹凸が熱のこもりを抑え、汗の吸収と発散を素早く助けるのだ。

その涼しさ故に、近江ちぢみは蚊帳とともに近江商人の手で全国へ広まっていった。今日、本麻の近江ちぢみを手にすることは少なくなっている。しかし、その生地に触った瞬間に、まるでDNAに記憶されていたかのように、少し懐かしい、しかし確実にさわやかな涼感が感じられる。この涼感にくるまれて眠ることができれば、どれほど幸せかと思うほど。

ねむりはかせ       沢田昌宏