Q:マザーグースとかマザーダックって本当に良いんですか?

グース5

2016.4.27 2016.12.23 追記

マザーとは卵を産む親鳥のことです

羽毛にマザーグースとかマザーダックという表示がしていて、親鳥だから羽毛が良いと説明されているケースがかなりあります。しかし、眠りのプロショップSawadaは2014年からマザーグースという表示を止めています。なぜでしょうか?

グース(ガチョウ)にせよダック(アヒル)にせよ、農場で飼育されたものがほとんどです。飼育の目的は主に肉、そして羽毛です。なので、ほとんどの鳥は1年以内に肉として処分されますが、一部の生育の良い鳥は親鳥となるべく残されます。翌年から卵を産むためで、農家も良い遺伝子の鳥を残したいということでしょう。

かつてはハンドプラッキングという方法で羽毛を採っていました

poland-plukking

鳥の羽毛は生育していくと順次生え替わります。生え替わりの寸前に、画像のように鳥から羽毛を手によって採取することをハンドプラッキング(ハンドピック)と良い、通常、卵から孵化して9~10週間目で1回目、16週ぐらいで2回目、22~23週で3回目が行われ、3回目のものが秋摘みといわれ最も良い羽毛が採れました。手で摘みとらないと、地面に落ちてしまったら羽毛の採取が難しくなるからです。

主に完全に生育した鳥から採ったものが「マザーグース」と呼ばれてきたのです

一方、生育した鳥から親鳥が選別されます。

ハンガリー農場選別風景1

ちょうどこれはハンガリーの農場に10月始めに訪れた時の鳥を選別している画像です。親鳥は3~4年生きて、卵を産むとともに、年に2回羽毛を摘み取られています。これを正確にはマザーグース羽毛という訳ですが、これも春摘みはだめで、秋摘みが良いといわれています。また、この年に生まれた鳥はこの時点ではほぼ成長しているので、マザーグースと違うのは平均的な体格ぐらいでしょう。過去においても、一般に出回ってきたマザーグースというのは3回目のグレードの高い羽毛もしくは、親鳥から採取されたものを合わせて表現しているものがほとんどです。それは1回目、2回目摘み取りのものと差別化するためでした。

若鳥と親鳥では、もちろん羽毛の質に違いがあります

一方、生後8週間ぐらいで若鳥として処分される場合は、手摘みでなく、と殺後に工場で羽根を取り除く際に羽毛が得られます。一般的に流通している羽毛はこのタイプがほとんどです。飼育期間が短いためであること、8週間ぐらいでは栄養は全て身体に行き羽毛までは回らないことから、ダウンボールが小さく、未成熟ダウンが多いので良質な羽毛は得られません。この場合は当然、親鳥からの方が良い羽毛を得ることができます。

2012年からハンドプラッキングが禁止されました

ところが、ハンドプラッキングは動物虐待にあたるというキャンペーンが行われた結果、2012年からはハンドプラッキングが禁止されました。どうも、この手の動物愛護団体のやり方は一方的で、本来なら生え替わり寸前を採るところを、無理矢理毛をむしったようにキャンペーンが行われたようで、「ある、合繊メーカーが暗躍した」など真偽のほどが判らない噂がながれるなどしましたが、結局禁止となってしまったのです。

このあおりを食ったのが、良質な環境で鳥を飼育してきた農家と、プラッキングを生業としてきた(主にジプシーといわれる)女性たちです。結局、良質な羽毛を得るには、途中の羽毛の採取をあきらめねばならず、十分育てて、と殺してから羽毛を手で採取するという方法でしか得られなくなりました。

核家族化の影響で以前ほどクリスマスでガチョウの丸焼きをしなくなったと云われており、若鳥の需要が増えてきたこと、グース肉自体の需要低下もあり、グースの飼育数が減り、完熟した羽毛はさらに少なくなり、価格が一気に高騰しました。

2016/12/23 追記

今の現状では、ポーランド・ハンガリーともマザーグースは羽根の生え替わり時期にプラッキング(ハーヴェスティングと呼ばれています)は行われています。

マザーグース・マザーダックの実態

このことから気が付くと思いますが、現在ではマザーグース・マザーダックから生きたまま羽毛を得ることはできません。あるいは裏で、あるいは中国では行われているかもしれませんが、コンプライアンスの厳しい真っ当な羽毛業者から出回ることはないでしょう。つまり、マザーグースもマザーダックも確かに存在しているものの、世の中に出回っているだけの数量はとても確保できないと思われます。

今日、羽毛布団に「マザー××」と表示されているとすれば、それは、グースやダックの中で比較的良質のものをそのような表現で表しているものがほとんどだと思われます。「そんなの、ごまかしやないか」といわれたら、「親鳥でなく、マザーグースと(私たちが勝手に)呼んでいる鳥から得られたものです」という言い訳になりそうです。残念ながら、グースと表示しながらダックが30%以上混入していたり、ダックの羽毛をグースと表示したり、情けない話ですが、あまりモラルのある業界ではないのです。

原料メーカーがマザーグースと表示すればマザーグース?

先日ある見積を見せてもらいました。中国の羽毛原料メーカーで国内の非常に有名メーカーも採用しているというから、ある程度しっかりした企業なのでしょう。

中にホワイトマザーグース ダウン93% 400dp(ダウンパワー)とあります。

「えっ?400dpでマザーグースってあり?」と聞くと「原料メーカーがマザーグースと言えば(実態はどうであれ)マザーグースと表示できる」という答え。提示されていた価格は確かに安いのですが、これって安物買いの銭失い?と思いました。本当のマザーグースとはとても思われませんし、本当にマザーグースだとしたら、マザーで400dpしか出ないようなホワイトグースは極めて劣悪な環境で飼育されている最悪の羽毛ということになります。マザーグースと名乗るのであれば最低限440dpはキープしてもらいたいものです。

質の良い羽毛と質の悪い羽毛があるだけ

店主の意見を言わしていただくと、質の良い羽毛と質の悪い羽毛、その中間があるだけです。たとえ本物のマザーグースであっても飼育環境が悪ければ、意味をなしません。なんせ、ごまかしの多い業界ですから、眠りのプロショップSawadaでは2014年から、トレーサビリティがしっかりした羽毛だけを扱うようにしています。ですので、ダックの混入があったり、農場がはっきりしないロシアの羽毛や、400dpクラスのハンガリー産羽毛はリストから外れました。

よく原産地証明書なるものが付いていますが、これも印刷すればできること。私の店でも付けていますが、これは気休め。実際の判断基準は良い羽毛か、そうでないかで選んでいます。