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ポーランド産のグースの質が良い理由は品種管理が徹底しているから

目次

良い羽毛を探すとポーランドに行き着く・・・そのわけは

長年ヨーロッパへ行き、羽毛の買い付けや農場訪問を行なってきました。

羽毛の飼育はヨーロッパの色々なところで行なわれています。その中でも、品質が安定して提供されているという点や、特に高品質の羽毛を求めようとすると、もちろんグース(鵞鳥)になるわけですが、最後はポーランドに行き着きます。

今回(2023)は、娘2人がポーランドの視察研修にいきましたので、詳しい報告は帰国後のお楽しみです。

実はロシアの西シベリア地域も良い羽毛が採れるのですが、品質の安定性がないのと、今の情勢でロシア産はとてもその羽毛を仕入れるわけにはいきません。

ポーランド産でもグースとダックでは品質に大きな違いがありますので注意

よくポーランド産ダウンなどと表示されている場合は、ダックダウン(アヒル)であることがほとんどです。アヒル(家鴨)とグース(鵞鳥)では身体の大きさが全く異なります。グースの方が大きく、従って大きな羽毛(ダウンボール)が得られます。

また、ダックダウンは油脂分が多いため、臭いやすい羽毛です。安い羽毛布団やダウンケットでぷーんと臭うのは、洗浄が不十分であることが多く、この臭いはとれにくいのです。

グース 身体が大きい

ダック 身体が小さくダウンボールも小さい

品種管理が徹底しているポーランドグース

グースに限らず、飼育されている動物はさまざまな品種改良がなされています。ポーランドでは、ホワイトコウダ種といわれる品種の管理が徹底しているのが特徴です。その中心的役割を果たしているのがコウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所です。

コウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所とは

(以下、今回の視察テキストを元に再構成しています。)

第2次世界大戦終結直後の1946年、ポーランド共和国の農業部門の復興および生産性・競争カの向上を目的に、農業省生産部管轄の下、バリツェ国立動物科学研究所(クラクフ)設立されました。コウダ・ヴィエルカ研究所はその下部組織であり、グースの品種改良及び飼育技術研究担当しています。

ポーランド唯一の公認グース「ホワイト・コウダ種」

コウダ・ヴィエルカ国立動物科学研究所の「ホワイト・コウダ種」グースがポーランド唯一の公認グースとなったことから、ポーランド産グースの源泉として、「全国総生産量管理」という重要な任務も担っています。

研究所では当初、ポーランド各地に存在した様々な種類のグースを研究してきました。1961年に、試験的にデンマークから輸入したイタリアン・ホワイト種のグースが、成長速度・繁殖能力の高さから最優秀と判断されました。

以後、所長のビェリンスキ博士が強力なリーダーシップで同種の品種改良、全国普及、飼育技術改善を推進して今日に至ります。

グースの品種改良の成果

約半世紀に渡るイタリアン・ホワイト種の繁殖の過程で、厳密な選別・淘汰を継続し、純血種のW33(成長が早い)とW11(超多産型)が開発されました。W33とW11の混血が精肉用グース(W31)で、カラス麦を中心とする飼育方法と相俟って欧州市場で大好評となります。

コウダ・ヴィエルカ研究所における品種改良の成果は学術界でも認知され、「ホワイト・コウダ種」として品種登録され、その商業的価値を高めるために商標登録も行なわれました。日本ではユーロ・コンフォート社が2003年9月に商標出願、2004年5月に登録済みです。

ポーランド全国へホワイト・コウダ種が普及

共和国政府が国策として「ホワイト・コウダ種」の普及を促進したため、今日ではポーランド全国のグースほぼ100%が「ホワイト・コウダ種」です。

  1. 全国の親鳥(マザー)農場と、卵をかえす孵化施設は農業省水鳥飼育監督局の許認可制。
  2. 親鳥(マザー)農場は、コウダ・ヴィエルカ研究農場から購入したホワイト・コウダ種のみを繁殖目的で 飼育することが許可される。飼育状況は定期的に前述の監督局の視察を受ける。
  3. 孵化施設は、同様に認可・監督を受けた親鳥(マザー)農場のみからホワイト・コウダ種の卵の供給を受けることができる。
  4. 上記の規則に違反した親鳥(マザー)農場または孵化施設は閉鎖に追い込まれる。
  5. 親鳥(マザー)農場は4年に1度、親鳥(マザー)の交換を義務付けられている。

このようにポーランドのグース飼育産業はピラミッド構造になっており、全体を農業省が厳しく監督指導しているために、品質や市場価格の安定が保たれるという構造になっています。

つまり、コウダ・ヴィエルカ研究所のみに品種改良されたグランドマザーグースが居て、その子どものみマザーグースとして、卵のみを得るためのマザーグース農場に卸されます。

ポーランド クラクフ近郊にあるマザーグース農場のサイダックさんと

コウダ・ヴィエルカ研究所における研究者たち

バリツェ研究所を頂点とする国立研究所には600人の従業員がおり、うち教授職30人、博士号所持者が77人。コウダ・ヴィエルカではシムチャク所長の下、総監督のハリナ・ビェリンスカ博士を中心に4人の博士が下記の職務を担っています。

  1. 品種改良…1羽1羽のグースを番号管理。生育/繁殖状況を評価、選抜に反映させる。
    W11とW33に関しては、DNA鑑定でもプライマリーマーカーの個体差がほぼ0と出るほど純血化が 完了している。一方で、近親交配による遺伝リスクも、各種鳥グースの番号データベースを活用して 三世代まで遡り重複を避けることにより管理している。
  2. 生産量管理…年間に全国供給する親鳥(マザー)の数を約7万に安定させる。
    これによって、精肉用グース(W31) の数が約4~5百万で安定し、例えばハンガリーで起こった生産過剰 による市価崩壊のような事態を避けられる。
  3. 品質維持…異常が発生した場合、即対応。例えば、先祖帰りで灰色・茶褐色の羽毛が見られた場合、そのグースのみならず親兄弟姉妹を皆殺しにせねばならない。その血統の子孫が全国で繁殖すると、 ポーランド産グースダウンのブラックポイントが増えて羽毛の価値を損なうからである。

以前にマザーグース農場を訪れた際には、孵化施設の担当者も一緒に来てくれました。このように緊密な生産者間の連携が、高品質なポーランドグースを生む土壌となっています。

品質の安定と極上のポーランドグース

実際私どもでは5種類のポーランドグースを扱っています。

PPST98 最高級の手選別ステッキーポーランドマザーグース
PPMG95 フィリングパワー1000の最高級ポーランドマザーグース
PST95N 絡みが強い手選別ステッキーポーランドグース
PWG93S ダウンパワー430のポーランドグース
PWG93 ダウンパワー410

プレミアムなPPST98 や PPMG95 はポーランドでも極一握りのトップグレードの羽毛ですが、PWG93S や PWG93 というクラスでも、羽毛の品質の安定度が高いです。

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