ページの目次
- 1 結論を先に言いますと [自分の体質と睡眠環境に最適な保温力]に合わせて、 [通気性の良い軽量な綿100%の生地]と [ホコリの少ないパワーのある良質な羽毛]を使った羽毛布団を選ぶこと
- 2 羽毛ふとんを5,500枚以上仕立てたプロがすすめる、本当に快適な羽毛ふとんの選び方
- 3 羽毛布団の選び方1:最適な保温力はどれぐらい必要か
- 4 羽毛布団の選び方2:軽くて通気性の良い生地を選ぶ
- 5 羽毛布団の選び方3:ホコリの少ない良質な羽毛を選ぶ
- 6 もう一回、結論をいいます [自分の体質と睡眠環境に最適な保温力]に合わせて、 [通気性の良い軽量な綿100%の生地]と [ホコリの少ないパワーのある良質な羽毛]を使った羽毛布団を選ぶこと
- 7 羽毛ふとんのメンテナンスについて
結論を先に言いますと
[自分の体質と睡眠環境に最適な保温力]に合わせて、
[通気性の良い軽量な綿100%の生地]と
[ホコリの少ないパワーのある良質な羽毛]を使った羽毛布団を選ぶこと
なぜそうなのかを、以下で説明します。
羽毛ふとんを5,500枚以上仕立てたプロがすすめる、本当に快適な羽毛ふとんの選び方
1988年に店内にいち早く羽毛製造機を置き、手づくりで羽毛ふとんを仕立てて5,500枚を超えました。リフォーム仕立てを入れると8000枚ほどにもなります。この30年間は、快適な羽毛ふとんとはどうあるべきなのかの試行錯誤の連続でした。
高気密高断熱住宅では、選び方が変わってくる
一方で、この間に日本の住宅事情は急激に高気密・高断熱化へと変わりました。環境が変われば羽毛ふとんの選び方が変わってくるのです。
今なお多くのメーカーが保温性を重視して、高級バージョンには二層式、あるいは三層式などの、嵩高の高い羽毛ふとんをラインアップしています。旧来の日本式住宅ならそれでもいいかも知れませんが、都市部のマンション等では、普通厚の掛ふとんでも暑いといわれるようになりました。中厚仕立てで十分になってきたのです。特に昨今は通気性が悪いポリエステル系の側生地が大半を占めるようになりましたので、綿生地に比べると非常に蒸れやすくなっています。逆行しているとしか思えません。
体質(暑がり・寒がり)と住宅の睡眠環境によって、選び方が異なるのです。
羽毛原料の良し悪しだけで、羽毛ふとんを説明する大きな間違い
メーカーのカタログでも、さまざまな通販サイトや情報サイトでも、ほとんどが羽毛ふとんの良し悪しを羽毛の品質からはじめています。もちろん、良質の羽毛を使うことは当然のことですが、それでは良い羽毛原料を使えば良質な睡眠が得られるのか、といえば必ずしもそうではありません。どんなに良い材料を使ったとしても、料理方法=生地や仕立て、羽毛の量のバランスが悪ければその良さを活かせません。
大概の場合、側生地やキルティングの説明はおざなり
しかし、羽毛布団の快適さは生地とキルティングで決まる
一方、羽毛の産地や種類については懇切丁寧な説明がある割には、生地やキルティングについてはあまり十分な説明がなされていません。なによりも、快適な睡眠を得るための寝床内温湿度を実現するために、どのような生地を選び、どのレベルの羽毛をどれだけ入れたらいいのか、という考えに基づいた説明がほとんどないのです。
しかし、快適な睡眠環境とされる温度33℃湿度50%を実現するには、通気性の良い軽量な生地と睡眠環境や体質にあわせた厚さやキルティングを選ぶことが必要です。
原材料の品質だけで、羽毛ふとんを説明することはやめよう
長く快適に健康的に使うためには、良質な生地や羽毛を使うことは大切なことです。しかし、ほとんどの方は良い羽毛ふとんが欲しいのではなく、良い睡眠が得られる羽毛ふとんを求めてらっしゃるのだと思います。例えばあるメーカーはトップレベルの羽毛と良い生地と多層式の複雑なキルティングで良い羽毛ふとんを作っています。しかし、一般的な男性に取って、この羽毛ふとんは厳寒期をのぞけば暑すぎて寝苦しいだけの羽毛ふとんでしょう。使う人や寝室の環境によって、選ぶ基準が変わってくるのです。
羽毛布団の選び方1:最適な保温力はどれぐらい必要か
保温力の目安を知る
私どもの羽毛ふとんは、保温力の目安を付けています。保温力が小さい ●○○○○ から 保温力が大きい ●●●●● まで5段階にしています。これでは大雑把なので、ここでは10段階で説明することにします。
保温力 | 表示 | 代表的な使用時期 | キルティング | 羽毛の量 |
1 | ●○○○○ | 薄肌:7~9月 | 7×10 直 | 200 |
2 | ●○○○○ | 肌:5~7月 9月 | 6×7 直 2cm | 300 |
3 | ●○○○○ | 肌:5~6月 9~10月 | 6×7 2cm | 400 |
4 | ●●○○○ | 合:4~5月 9~11月 | 6×7 4cm | 500 |
5 | ●●○○○ | 合・中厚:3~5月 9~11月 | 5×6 4cm | 600 |
6 | ●●●○○ | 中厚:10~5月 | 5×6 7cm | 800 |
7 | ●●●●○ | 普通厚:10~4月 | 5×6 11cm | 900 |
8 | ●●●●○ | 普通厚:10~4月 | 変形5×5 7cm | 950 |
9 | ●●●●● | 厚手:11~3月 | 変形5×5 11cm | 1050 |
10 | ●●●●● | 厚手:11~3月 | 二層キルト | 1100 |
代表的な使用時期については、あくまで目安です。使う人の体質・住んでいる地域の気候風土・寝室の陽当たり・断熱性通気性などによって、当然のことながら差がでます。
保温力は嵩高で決まりますので、充填する羽毛の量によって異なります。最適な充填量は生地の重量と、羽毛のパワーにもよって変わります。上の表は生地がオリジナルS9100(85g/㎡)にダウンパワー440dp(プレミアムゴールドラベルクラス)の羽毛を入れた場合の、当店の標準充填量です。これが80サテン(114g/㎡)で羽毛が400dpだと 保温力6の場合1000g必要です。一般に販売されている羽毛ふとんは保温力8~10がほとんどです。
太平洋岸都市部のマンションなら中厚●●●○○を基準にする
東京・大阪・名古屋など太平洋沿岸部の都市のマンションの場合、かなり部屋が暖かいので中厚6を基準にします。寒がりであれば7~8ぐらい、かなり暑がりなら5でもいいでしょう。
当店にメール等でお問合せいただくお客様の多くがこのパターンです。中厚は最初不安に思われる方がいらっしゃいますが、実際にはこれで十分という方が多いです。
暑がりの方も中厚を基準で選んだ方がいいでしょう。寒くなれば、カバーや毛布などの補助寝具をうまく使うことで調整できるからです。
「羽毛布団の使用感ですが、一言で言うなら、沢田様のお店で羽毛布団を購入して良かったです。使い始めて1週間も経っておりませんが、変な汗をかかなくなった、夜中に目が覚めることがなくなった、翌朝、疲れが残っていない等、変化を実感しております。
特に、私自身は夜中に目が覚めることが多く、それが朝の倦怠感に繋がっていたと思うので、目覚めが軽くなって助かっております。重さと通気性って本当に大事なんですね。最初は、あまりに軽くて薄く感じたので、本当に中厚で大丈夫かと不安になりましたが、この真冬並みの寒さでも暖かいです。
暖かさも、からっとした暖かさで、今までは湿気を帯びた暖かさだったんだと思いました。
以前の羽毛布団は所謂、羽毛布団もどきで、本物の羽毛布団はこういうものなんだと違いを感じております。」
このお客様の場合はTE200というドイツ製の軽量で通気性の良い生地の羽毛布団ですので、蒸れが非常に少なくなっています。これが「変な汗をかかなくなった、夜中に目が覚めることがなくなった」につながっているのです。
それ以外のケースは普通厚●●●●○を基準にする
一般的には保温力7~8を基準にします。多く出回っている4×5キルトは保温力7に相当します。変形5×5は羽毛の量は少なくても、縫い目が身体の中心部に来ないので、保温力は4×5キルトより上回る8になります。
眠りのプロショップSawadaでは、変形5×5キルトをおすすめしています。
日本家屋で寒がりなら厚手の二層キルトを検討する
メーカーの高級羽毛布団のほとんどが、この厚手に仕上がる二層キルト(場合によっては三層キルト)です。しかしながら、今日の住宅環境では、厳冬期ならともかく、4月や10月などの中間期に使いづらいため、基礎代謝が落ちている高齢者以外には、あまりおすすめできません。中地に通気性の悪いナイロンタフタを使うため、蒸れやすい欠点があります。(当店の二層キルトは、ほとんどがメッシュの中生地を使っていますので、通気性の問題はあまりありません)
冬の保温性を確保するには、敷の保温性を十分に確保した上で、羽毛布団に軽量の獣毛毛布を組み合わせて、トータルの保温性を確保するようにした方がいいでしょう。
羽毛布団の選び方2:軽くて通気性の良い生地を選ぶ
必要な保温性が決まれば、次は・・・羽毛の質ではなく、羽毛の生地選びです。
羽毛布団の快適さは、生地の通気度と重量で決まる
羽毛は生地を通じて呼吸をしますから、どれだけ良い羽毛を使ったとしても通気性の悪い生地を使うと、その良さが活きてきません。通気性の良い生地は蒸れにくく、寝床内温湿度33℃50%をキープしやすくなります。同時に、羽毛を圧迫せずに、たっぷりと羽毛が拡がるようにするにはできるだけ軽い生地の方が良いのです。
ポリエステル混生地の羽毛布団は選んではいけない
残念なことに、今日多くの羽毛布団にはポリエステル100%の生地、あるいはポリエステル混の生地が使われています。主に安くなるというコスト上の理由によるものです。ところがこれらの多くは通気性が綿100%の生地に比べると劣ります。ヨーロッパの生地に比べると通気性は1/4~1/8しかありません。
成長期の子どもには、ポリエステル混生地の羽毛布団は絶対に使わせない
当然のことながら、通気性が悪いと湿気がこもって蒸れやすくなります。「子どもの羽毛布団は安いので十分と思って、ホームセンターで購入したら布団を直ぐにはねてしまい、私たちの布団(当店で購入)に入ってきます」というお客様の声。子どもは基礎代謝量が大人の2~3倍ありますから、汗かきなので、通気性が悪い布団は不快感が強くなり、眠りの質が落ちます。
睡眠の質が低下すると、成長ホルモンの分泌が悪くなり、脳や身体の発達を妨げてしまいます。ポリエステルわたやポリエステル生地のふとんは子どもには厳禁です。
ノンダウンプルーフ生地の羽毛ふとんもあまりおすすめできない
一部のメーカーでは、ダウンプルーフ加工していない生地の方が、表面の吸湿性が良くなるので良いとおすすめしている場合があります。たしかに一理ありますが、トータルとしての羽毛ふとんの良さを突き詰めると、私たちはこれには懐疑的です。というのも、ダウンプルーフ加工をしないために、通常よりさらに高密度で織る必要があり、生地重量がかなり増えてしまうからです。一般的にノンダウンプルーフの生地は通常のものより10%程度重量が増えます。また、洗濯するごとに通気度が低下するというのも問題と考えています。
羽毛布団の選び方3:ホコリの少ない良質な羽毛を選ぶ
生地の通気性を上げていくと、今度は羽毛の吹き出しが目立ってしまう。という問題がでてきます。羽毛布団にはダウンプルーフという吹き止め加工がなされていて、これが通気性を妨げているわけですが、低級な羽毛はゴミが多いため、通気性の良い生地では吹き出しが多い出てしまいます。
良質な羽毛を選ぶ理由
理由1 ゴミが少ないので、吹き出しにくい
質の良い羽毛ほど、ダウンボールが大きく、未成熟ダウンやダウンファイバーなど羽毛のゴミが少なくなります。良い羽毛はダウンボールの中心部が密集しているために、壊れにくく長く使えますが、未成熟ダウンは使用しているうちに壊れてファイバーなどゴミになります。
理由2 アイダーやステッキーダウンは、通気度の高い生地を使うことができる
日本で流通する羽毛布団用生地は、綿100%の場合、通気度が2cc以下がほとんどです。ポリエステル混の場合は1cc未満がほとんどです。一方、ヨーロッパの生地は通気度は4~8ccと、日本に比べると高いものが多いのです。
この高い通気度の生地を使うには、アイダーやステッキーダウンなど絡みが強い羽毛が必要です。これらのダウンは、手選別によって選り分けられているため、ゴミが非常に少ないのが特徴だからです。
理由3 嵩がでるので、含む空気の量が増える
良い羽毛は嵩も多くでるので、羽毛の充填量を減らすことができます。ダウンパワーが高ければ、その分少ない羽毛で同じ嵩を出すことができるわけですが、その場合同じ嵩でも空気の量が増えるために、特に湿度の調節が容易になります。
理由4 長く使えて、安全
理由1にあるように、良いダウンは壊れにくいので、実際羽毛のリフォームを行なうと嵩の戻りが良く長く使えます。ホコリも少ないのでハウスダストの軽減にもつながります。一般にダックダウンの方がホコリが多いので,グースダウンをおすすめします。
もう一回、結論をいいます
[自分の体質と睡眠環境に最適な保温力]に合わせて、
[通気性の良い軽量な綿100%の生地]と
[ホコリの少ないパワーのある良質な羽毛]を使った羽毛布団を選ぶこと
通常羽毛布団の説明は、まず羽毛の質から始まり、その後に主にソフトかどうかという視点で生地が語られて、かさ高性をいかに出すかということでキルティングの説明が入ります。この方法では、快適な睡眠のための羽毛布団をどう選ぶのかが説明できません。
快適に睡眠できる羽毛布団を選ぶには、
[1:最適な保温力を得る厚さを選択]し、主に温湿度の調節力を高めるために
[2:羽毛の良さを活かす通気性が良く軽い生地]を選び、最後に、ホコリやハウスダストを減らし、長い耐久性を得るために
[3:ホコリの少ないパワーのある良質な羽毛]、できればアイダーやステッキーダウンのような絡みの強い手選別のダウンを使うという順序で選ぶのが本来なのです。
羽毛ふとんのメンテナンスについて