日本の夏が暑いのは、湿気が高いため
快適な寝床内温度は33℃湿度50%
暑がりには2種類あります。温度が高いと弱い場合と、蒸れに不快感を感じる場合です。すぐに温度が高いから暑いと思いがちです。
しかし快適な寝床内は温度33℃で湿度50%といいますから、これはヒトの皮膚表面の温度が32.5℃ぐらいなので、33℃は一見暑いように思われますが、この温度は身体から熱が奪われないバランスが取れた温度です。
つまり日本の夏が暑いのは、湿気が高く不快指数が増えるからです。そのため、寝付かれずに入眠に妨げられ、睡眠の質が悪化します。
入眠から90分、最初に最も多く汗をかく
一般的に女性に比べて男性は代謝量が多いのが特徴です。代謝量が多いと汗などの分泌も自然に増えます。
上の図は睡眠時の深さと発汗の関係を表しています。入眠すると一番深いノンレム睡眠が訪れますが、この時に最も発汗量が多くなります。この時に素早く汗を吸って、放出する働きが寝具にないと、湿度は上がり蒸れがでて快適な睡眠を妨げます。
ポリエステルの寝具は汗を吸わないので、暑がりには不向き
ところが、快眠カウンセリングなどのご相談をみていても、ポリエステル寝具を使っている方が実に多いのです。ポリエステルやアクリルなどの合成繊維は、基本的に汗を吸うのが苦手です。蒸れやすくなるので、暑がりの方には向きません。羽毛布団の側地にポリエステルをつかっているケースも多いのですが、通気性が悪くなり、蒸れやすい布団になります。
ポリエステル寝具の中には吸汗性ポリエステルなどと汗を吸う表示をしたものがあります。しかし、JIS規格の吸湿性能は長時間における性能表示であり、入眠直後の急激な湿度変化(上図)には対応しきれないことが多いので、単純に吸汗性があるからと理解しない方がいいでしょう。
同様の理由で低反発ウレタンも、身体に密着して汗が逃げにくい、通気性が良くないという理由で暑がりの方には向かない素材です。
また、マットレスの上に直接シーツだけでという方も多く、本来であれば汗を吸う吸湿発散性の良いベッドパッドが必要なのです。
子どもは暑がり 基礎代謝量は大人の2~3倍
子どもは基礎代謝量が大人の2~3倍あるので、発汗量も多く暑がりです。にもかかわらず、丸洗いできるなどの理由で子どもにポリエステルの布団を使っている人がかなり多いのが現状です。
蒸れると睡眠の質が低下し、成長ホルモンの分泌が妨げられ、子どもの健全な身体と心の発達に悪影響を与えます。睡眠の質が高いほど、脳の記憶を司る海馬の成長も大きいといわれており、成績にも影響がでかねません。
足に熱のこもりを感じやすい
ヒトは入眠する前は、活発に活動している内蔵や身体の部分が温度が高いのですが、入眠すると温度が均一になってきます。ということは、特に足の温度が上がるために、よけいに蒸れを足に感じることがおおいので、シーツやカバーをうまく選ぶことが大切です。
湿気の多い日本の風土に合わせて作られた和風建築
日本の風土は湿気が多いために、古くは高床式、そして寝殿造に代表される和風建築は保温より、通気性を重視した作りになっていました。
昨今の主流は高気密高断熱住宅
ところが昨今の住宅の主流は高気密高断熱住宅です。保温性は大きく改善されましたが、湿気が逃げにくいのが課題です。現在の寝具の課題は、保温することより、湿気を逃がし快適な温湿度をどのように保つかが大きな課題となりました。
暑がりには、吸放湿性と熱伝導性を両立させる
吸放湿性を改善するには、羊毛・羽毛・絹・麻などの天然素材
吸湿性に優れているのは、基本的には天然素材です。ところが、最もポピュラーな木綿わたは汗の吸いは良好ですが、放湿が苦手です。
吸放湿性、および温度調節に最も最適な素材は羊毛(ウール)でしょう。それ故に、羊毛は人類の歴史と共に長く使われてきたのです。
羊毛布団の代表格であるドイツ・ビラベック社の敷ふとんは、リユーマチにも良いとされていますが、その訳は通気性が非常に良いマコトリコットの生地と、吸放湿性の良いウールを使っているので、いつもさらさらで湿気を持たないからです。
側生地の通気性は、湿度コントロールに重要な役割を果たしている
中わたが吸湿発散性に優れた素材であっても、生地の通気性が悪くては、その良さが活かされません。ビラベックの羊毛敷布団が快適で蒸れにくいのは、ウールの良さもありますが、通気性の良いマコトリコットの生地を使っているからです。
羽毛布団の場合でも、通気性の良い生地(通気度2cc以上)と、悪い生地(1cc以下)では同じように作られていても、快適さはまったく異なります。通気性は、湿度を下げる上で非常に重要な要素なのです。
つまり、素材自体の吸放湿性と、通気性を確保することで、快適な温湿度を得ることができます。
熱伝導性に優れさらっとした麻。年間使うならリネン麻
羊毛は吸着熱も高い素材なので、吸放湿性と保温性に優れています。夏においても、汗の発汗は冬以上なので、吸放湿性の良い羊毛は最適な素材の代表なのですが、一方で、保温性が良い分熱がこもりやすいという欠点があります。
麻は天然素材の中では熱伝導性に優れた繊維です。つまり保温性はありませんが、吸放湿性も良く乾きやすいので、暑い夏はさらっとさわやかな素材です。
ですから、夏の蚊帳、ちぢみの夏ふとんなどは全て麻でできていたのです。もめんが普及する江戸時代より前は庶民の着物は麻しかなかったのですから、夏は過しやすい反面、冬は寒かったんでしょうね。
麻にはシャリ感があって夏もっとも涼しいラミー麻(苧麻)、ヨーロッパ由来のソフト目なリネン麻(亜麻)、これもソフトなヘンプ(大麻)と主に3種類ありますが、年間通して使うのであれば、リネン麻がおすすめです。
夏は羊毛敷布団の上に、本麻の敷パッドシーツを組合せる
しばしばベッドパッドと敷パッドシーツは良く似ている場合があり、間違えられることが多いのですが、ベッドパッドは布団の一種であり(=通常はシーツをかけて使う)、敷パッドシーツはシーツの一種です。
夏は発汗も冬の倍以上になることも多いので、敷パッドシーツだけでは汗を吸いきることができません。基本的にはマットレスの上に羊毛のベッドパッドあるいは敷布団を使って、吸放湿性を確保しながら、その上に本麻の敷パッドシーツを組合せることで、涼感と熱のこもりを解消させることで暑がりの方でも夏は快適に過すことができます。
汗取りパッドは本当に汗を吸うのか?
よく「汗取りパッド」としてキルティングした敷パッドシーツが販売されていますが、中わたはポリエステルわたが100%であることが多いので、字面通りに取らない方がいいでしょう。
吸汗性の高いものとしておすすめできるのはパシーマやサニセーフなど、ガーゼや脱脂綿を使ったケットや敷パッドです。ベッドパッドもポリエステルわたのタイプでは吸湿性能は不十分です。最低でも1kg以上の天然素材のものをおすすめします。
空気の通る層を作り出すと、放湿が素早くできる
メッシュ状のハニカムシートのような立体構造の空気を含むシートは効果的です。空気層を作ることで、吸収された汗の放湿を助けます。夏用としてファンが付いて空気の流通を強制的に行うものもでています。