店主のプロフィール
沢田昌宏 通称-ねむりはかせ
眠りのプロショップSawada(株式会社沢田商店)4代目店主
1958年生まれ、大学卒業後取引先の寝具製造メーカーで3年修行後、1983年長浜へ帰郷後、株式会社沢田商店へ入社、2001年代表取締役 現在に至る。
家族は嫁さんと娘4人 虎姫高校、神戸大学経営学部卒。
2001年 日本睡眠環境学会認定 睡眠環境コーディネーター 取得
2001年 米SSA認定 Proffesional Sleep Advisor BASIC stage 取得
2007年 滋賀医科大学睡眠学講座認定 睡眠指導士 初級 取得
2009年 滋賀医科大学睡眠学講座認定 睡眠指導士 上級 取得
滋賀医科大学睡眠学講座認定は、現在一般社団法人日本睡眠教育機構 認定に、睡眠指導士は睡眠健康指導士と改名しています。
2007年 グリーン購入大賞中小企業部門 大賞受賞
2015年 経済産業省 がんばる中小企業小規模事業者300社 選定
モノローグ:店主のヒストリー
最初は布団を一生懸命売っていただけ
長浜へ帰ってきた1983(昭和58)年というのは、長浜城が再興された年で長浜市にとってはまちづくり元年ともいえる年です。当時郊外への大型店出店問題があり、当時商店街連盟の会長をしていた父(先代)は毎日のように商工会議所へ行っていました。
そういう立場上もあったのでしょうが、帰ってくる前年1982年に商店街の真ん中にある店を新しく建て替えてオープンしたばかりでした。モノが売れた時代です。郊外の大型店が出店する前でしたから、長浜の街は大層賑わっていました。
当時は社員も多く、毎月のようにチラシを折り込んだり、外販をしたり、安い品から、高級品までフルラインの大量販売型寝具専門店でしたから、もちろん専門店としての品質は確保することは当たり前としても、いかにして売上をあげるか、が第一義でした。
それでも品質を上げようと、1988年には当時少なかった羽毛リフレッシュマシンを導入し、手づくりで羽毛ふとんを提供することを始めました。これが、羽毛の原料や生地について学ぶきっかけとなりました。
郊外型大型店出店と黒壁の誕生、観光地化
1988(昭和63)年郊外型大型店「長浜楽市」が出店後に環境は激変しました。中心市街地の店も多くが長浜楽市に出店し、中心市街地の客数は急速に減りつつあったのです。
その一方で1989(平成元)年には黒壁ガラス館が誕生。地元のお客様が減少する中で、観光客が増加するというマーケットの構造変化が起こりました。世の中はバブル全盛期となっていましたが、中心市街地の商店街は悪戦苦闘を続けていました。
バブル崩壊+価格破壊→ライフスタイルショップへ展開
1993(平成5)年のバブル崩壊の後にやってきたのは価格破壊の波です。安いことはいいことだ、という流れに私も店も巻き込まれました。海外製造の製品が増え、羽毛ふとんが特価9,800円などと、品質度外視で販売するようになってしまったのです。
これではまずい、と、取引先の寝具メーカーの新業態開発セミナーを受講しはじめました。講師は当時駆け出しでしたが、ワクワク系を提唱した小阪裕司さん。実にワクワク感たっぷりの楽しいセミナーでした。中でもアメリカツアーは印象的でした。このセミナーで出会った石田屋さん、いとしやの大杉さん、など多くの仲間は今も、良いライバルでもあります。
当時中心市街地は観光客が大きく増え、逆に地元のお客様が少なく、観光客が多い市街地へは車が乗り入れにくいと敬遠されました。そのため寝具の来客も販売額も減少傾向にあったのです。
1997(平成9)年3月、それまでの寝具専門店のスタイルを大きく変え、雑貨とライフスタイル提案を中心とし、それに寝具を組み合わせた新業態ライフスタイルショップOnesownさわだへのリニューアルを行いました。客層は大きく変化し、好意的に受け止められました。
感性を常に高めておくことは、ライフスタイル提案に欠かせません。当時は展示会に合わせて、ライフスタイルの先端である東京の青山、恵比寿、代官山などのショップめぐりが欠かせませんでした。
寝具を売っているのに、睡眠を知らない+寝具も知らない
雑貨・ライフスタイル提案でお客様の数は増えましたが、そこから寝具へとなかなか結びついていきません。そんなときに参加した、あるメーカーさんのセミナーで、自分たちがいかに睡眠のメカニズムを知らなかったか、ということに気付かされました。眠るための寝具を販売しているのに、睡眠のことは頭になかったのです。
一方、長年お付き合いしている寝具メーカーが倒産してしいました。商品を確保するために、そこの寝具を製造している工場を直接訪問すると、いままで聞いたことがない寝具や素材の情報が満載です。いままでは、展示会でおざなりに商品説明を聞くだけでしたから、そこに込められた製造している作り手の思い、なんて1ミリも伝わっていませんでした。
一般的な寝具メーカーは、その川上にある素材メーカーや製造工場と一緒に製品企画をします。それを営業セールスが小売店に販売するという流れです。寝具メーカーの企画をした商品課長さんレベルなら、そこそこの話を聞くことができますが、営業セールスは数字が先に来るために、本当に大事な情報が小売店に流れてこないのです。また寝具メーカーも睡眠が大切という割には、販売が優先のものづくりを行っていました。
私たちは、睡眠のしくみや、製品の持つ本当の良さをお客様にちゃんとお伝えしていないことにようやく気がついたのです。
日本睡眠環境学会で睡眠環境コーディネーターを取得
日本睡眠環境学会の当時会長だった横浜国立大学の川島先生に出会うきっかけがあり、睡眠や寝具の基本性能に関する座学や横浜国大での実験演習など4日間のカリキュラムを学んで「睡眠環境コーディネーター」の資格を得ました(2-04号)
日本睡眠学会がお医者さまを中心として睡眠医学を扱っているのに対し、日本睡眠環境学会は睡眠だけでなく、寝具や部屋などの温湿度設計など睡眠の環境設計など、どちらかといえば工学部系統の研究が中心です。
睡眠環境研究の現状と課題
理想的な寝床内温湿度が温度33℃湿度50%であるとうことは早くから云われていました。この状態では湿度の調節が重要です。睡眠環境講座においては、吸湿性などの実験を行います。
ここで理解できたのは、JISの吸湿性能は何時間も放置しておいた時の性能、いわゆる静的な性能に過ぎないということでした。へたりテストにしても、JISやLGAのテストは1/2まで基の素材を8万回変形させることを行うという方法ですが、実際の使用状況に近い湿度を加えながら圧迫を加えるという状況とは違う状態での性能です。
睡眠環境に関しては、当時足利工業大学が睡眠科学センターを設けて研究を行っている先端でもありました。
睡眠障害に対応する研究や、寝具性能の動的な性能試験、使用時の官能評価など取り組みが始まっているものもありますが、まだまだこれからというのが現状に思われます。というのも、仮に睡眠と睡眠環境の関係の試験を行おうとすると、要素(変数)が多すぎて、それに対して実効的な試験を行おうとすると膨大なテストが必要であるという点も考えられます。
つまり、さまざまなところで取組がなされていますが、明快に睡眠解決への方程式を持っているところは現在ないといっていいでしょう。
滋賀医科大学睡眠学講座 宮崎先生との出会い-睡眠指導士上級取得
日本で最初に生れた睡眠を総合的に扱う滋賀医科大学睡眠学講座
一方医学の分野では睡眠は「21世紀に残された最後の謎」といわれるぐらい、まだまだ未解明の部分も多いようです。そんな中で地元の滋賀医科大学に睡眠を総合的に扱う講座として睡眠学講座が設置されたと云うことを友人の先生からお聞きしました。いままでは精神医学や耳鼻科や呼吸器などさまざまな分野にまたがっていたものを統合して扱うようになったものです。
2006年2月に滋賀医科大学睡眠学講座が開催した「眠りの森報告会」に参加して、睡眠学講座特任教授の宮崎先生とお会いすることができました。先生からいろいろとお話しをお聞きすると共に、私どもの店にもお越しいただきました。
また社長の私自身がSASの疑いがあるということで、滋賀医大サテライトの京都田中睡眠クリニックで、睡眠ポリグラフテストを受けました。
それから、宮崎先生のもとで勉強を始め、睡眠指導士の初級から~中級~そして難関と云われる上級を取得しました。前述したように睡眠医学も現在新しい発見がされていて、いままで正しいと思われていたことが、必ずしもそうはいえない、といった事例も見つかっています。そのような最新の情報に出会えるのが睡眠指導士です。
現在では一般社団法人日本睡眠教育機構が設立され、睡眠健康指導士と改名されています。
上級健康睡眠指導士として、睡眠衛生の啓発も行っています
学校の授業や、PTAなどの講演会、先生などへのセミナー、健康講習会など 上級睡眠健康指導士として、さまざまなところで睡眠の大切さと、睡眠改善についてのお話をしています。
ご希望の方は info3@sleep-natura まで、ご相談下さい
睡眠医学の現状と課題-いかに健康寿命を延ばすか
睡眠医学の場合、多くは睡眠障害を抱えた患者さんの解決について臨床的にどうするか、ということと、睡眠のメカニズムはどうなっているかという純粋な睡眠医学の情報は非常に多いので役立ちます。
一方、予防医学としての取り組みは、生活習慣や運動、食事などについては取組まれているものの、睡眠環境については光の問題以外はほとんど取組まれていません。寝具や睡眠環境(温湿度)に関する情報をほとんどお持ちでない、というのが現状といえます。
最近では睡眠障害や不眠が、認知症と大きく関わってきていることがわかってきました。健康寿命を延ばすためには、今後は睡眠医学と睡眠環境学を統合して、睡眠改善に役立てて行くことが必要でないかと思います。
ヨーロッパで本物の自然に出会う
快適な睡眠環境を得るには、良質の自然素材から
昨今は発熱だとか、冷感だとか、機能性あふれる合成繊維が増えていますが、私は、実際にこれらの品を使うと、なんとなく身体に違和感を感じます。自然に生きる生物として、ヒトには本来良質な天然素材を使うべきではないのでしょうか?
1998年寝具のグリーン購入に取り組み始める
それを実感したのは、1998年に独自にグリーン購入基準を作り、環境に負荷をかけない寝具選びを始めたからです。
気持ちよく使えて、長く使えて、再利用できて、生分解する。このテーマにあう素材は天然素材なのです。
環境に取り組むヨーロッパから仕入れる
新合繊など機能的な合成繊維を進める日本に対して、ヨーロッパはもっと環境重視型でした。良質な自然素材の寝具を探すと、なぜかヨーロッパに多くあります。1998年以来毎年、ヨーロッパで展示会等を通じて、独自にベッドやマットレスなどの調達を始めました。
作る現場で作り手の想いを聞くことは、国にかかわらずとても大切なことなのです。ヨーロッパが無条件に良いというわけではありませんが、20年来のお付き合いで信用できる会社を見つけることができました。
1.オーストリア スリープウェル・カウフマン社のステッキーグースダウン
2.ドイツ ビラベック社の羊毛敷布団・ベッドパッド
3.オーストリア リラックス社のウッドスプリング・ラテックスマットレス
4.イタリア マラゾット社のカシミヤ毛布、ウール毛布
5.ハンガリー バイオテキシマ社のラテックスマットレス・ウッドスプリング
6.スイス シュロスベルグ社のサテン、ジャージーのカバー
7.リトアニア シウラス社のリネン生地
などを含め、さまざまなメーカーとお取引しています。
良質な睡眠を探求してオリジナルの寝具を生み出す
素材を突き詰めていくと、ついにオリジナル寝具のみならず、オリジナル素材の取組に入り込んできました。
もともとのきっかけは1988年の羽毛ふとんリフォーム機の導入でした。ただ睡眠や睡眠環境のメカニズムを勉強すればするほど、既存の寝具はどうにも合わないのです。典型は羽毛ふとんでしょう。今日市場に出回る羽毛ふとんの側生地の8割以上が、ポリエステル素材、もしくは高混率のものです。これでは安くはできても、快適に眠れるとはいえません。
良質な睡眠を探求するだけでなく、環境負荷にも配慮した製品作りを行っています。
これらの取組が評価されたのか、2016年5月に起きた大手メーカーによる羽毛産地偽装事件の際にはTBS番組「ひるおび」」に羽毛の専門家として出演をしました。