睡眠のリズムはレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す
ヒトは眠っている間にレム睡眠とノンレム睡眠を周期的に繰り返しています。
下のネコにみられるように、首を保持してうずくまるようにして眠っている時期がノンレム睡眠、だらりと無防備な姿勢で眠っている時期がレム睡眠です。特徴をとってノンレム睡眠をぐっすり睡眠、レム睡眠をぐったり睡眠とも言います。
レムとはRapid Eye Motion(急速眼球運動)の略で、まぶたの下で目がキョロキョロ動いています。このとき体は弛緩し、休息状態にありますが、脳は覚醒時に近い状態にあります。一方、ノンレム睡眠は脳の休息とも言われ、脳波の状態によって1~4の4つのレベルに分けられます。一番深い睡眠(通常レベル3~4)は徐波睡眠と呼ばれ、ゆったりした脳波δ(デルタ)波がみられます。
睡眠時の脳波の状態
覚醒時 目が開いている時はβ波(13Hz以上) 目を閉じているとα波(8~13Hz)
レベル1 入眠時はα波が減り、θ波(4~8Hz)が出てくる
レベル2 眠りに入った状態で睡眠紡錘波とK複合波が現れる
レベル3 δ波(4Hz以下)が20~50%未満
レベル4 δ波が50%以上
ヒトは睡眠に入ると最初に深い睡眠(徐波睡眠)が現れ、90~100分のサイクルでレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返されます。ノンレム睡眠は睡眠後期では次第に浅くなり、覚醒へ向かいます。このノンレム睡眠の量は最初を1とすると、次のノンレム睡眠は2分の1、4分の1となっていきます。
眠りのリズムをどのようにつくるか
上図のような理想的な眠りのリズムを取ることができればいいのですが、実際には、入眠が難しかったり、中途で覚醒したりとなかなか上手くリズムが作れない場合があります。
もっとも重要なのは入眠です。入眠時は体温を毛細血管を使って放出するしくみになっていますから、寝る少し前にはぬるめのお風呂に入る、汗をかかない程度の軽い運動をする。など、入眠時に血行を促進し、それによって体温の放出をうまく行えるような体温の温度勾配をつくることが大切です。
また、入眠直後にはかなりな発汗が伴い、それによって寝具の湿度が急激に変化します。素早く吸湿し発散して、温湿度を快適に保つ寝具や睡眠環境を整えることも大切です。
脳を創るレム睡眠・脳を休めるノンレム睡眠
総睡眠時間、レム睡眠、ノンレム睡眠の年齢推移
生理的にみた1日の総睡眠時間は新生児で16~17時間、4 ケ月児で14~15時間、1歳児で12~13時間、小児期で10~12時間、青少年期で8.5~10.5時間と次第に短縮します。睡眠時間の短縮はおもに昼間の睡眠の減少で、夜間の睡眠量はあまり変わりません。
青年期から中年期にかけて睡眠時間は7~8時間とほぼ安定しますが、その後は加齢とともに短縮する傾向にあります。しかし、実際には睡眠時間はかなり個人差があり、季節によっても変動します。
レム睡眠は新生児では総睡眠時間の約半分を占めますが、その後次第に減少して、小児期では20%程度になり、成人とあまり変わらなくなります。その後は加齢にともなって減少し、高齢者では15%程度となります。
このことからもわかるように、レム睡眠は脳を創る睡眠と言えるでしょう。一方、ノンレム睡眠は脳を休ませる睡眠ということになります。脳の発達をうまくするためにも、幼児期から睡眠時間を十分に取ることが必要です。
レム睡眠は記憶を固定させる
ノンレム睡眠時には脳代謝量は低下し,脳温も下がって休息状態にありますが,入眠後の深い睡眠時に成長ホルモンが分泌されることから,能動的に組織の増殖や損傷に対する修復をはかっています。
それに対して,レム睡眠時には記憶や感情を整理し,その固定・消去をしています。レム睡眠をとらないと技能の習得が悪く,語学の習熟が遅れるといわれています。
学習実験において,レム睡眠を中断しなかった場合,50%中断した場合,100%中断した場合についてみると,その程度に応じて記憶が悪くなり,レム睡眠をまったく取らせない状態(100%レム中断)では記憶が半分程度になっています。つまり,学習効果を上げるにはレム睡眠の確保が必要であるということになります。
なお、記憶の固定については、レム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠ステージ2での紡錘波も大脳海馬への記憶の固定に影響があることが報告されていますので、睡眠全体で記憶が固定されます。
睡眠習慣と成績の関係
2002 年の学術会議報告書に,アメリカの高校生のデータ(平日の睡眠習慣と学業成績との関係)が引用されています(福田,2002)。
成績の高い評価群(A およびB)の生徒では,睡眠時間は7時間30分近くあり,夜の10時半頃には就床しています。しかし,成績評価の低い群(C およびD)の生徒になると,就床時刻が遅くなり,それにともなって睡眠時間も少なくなっています。
学業に対してはある一定の睡眠時間が必要であり,それを満たす日常的な睡眠習慣の大切さがうかがえます。
昨今、文部科学省は「早寝、早起き、朝ごはん」の推進を叫んでいますが、睡眠理論から言えば「早起き、朝ごはん、(結果的に)早寝」となります。夜更かし型の子は朝食を抜く子が多く、結果的にメラトニンのもととなるトリプトファンが不足し、夜更かしになるという悪循環になる危険があります。