体内時計のしくみと睡眠
ヒトは間脳の視床下部にある視交叉上核が生体時計の働きをもっています。目から入った光の信号は、視神経→視交叉上核→上頚部交感神経節→松果体に達します。
夕刻から夜間にかけて松果体で産生されるメラトニン量が増大すると、視交叉上核と全身の臓器にあるメラトニン受容体に伝えられ、夜間の休息に適合した生理的変化(呼吸、脈拍、血圧、体温の低下)がみられます。
脳では睡眠中枢を優位に働かせて眠りを起こさせ、副交感神経支配を優位に保つことで、自律神経系の働きを弱めます。逆に、昼間の血中のメラトニン量の減少により脳の覚醒中枢が優位になり、交感神経支配が強くなっ て、呼吸循環機能が克進します。
睡眠と覚醒によって、メラトニンと体温は相反するリズムをえがきます。眠る前には緊張や興奮があると、交感神経支配が強くなって入眠しにくくなり、リラックスした状態にすることが大切です。
体内時計のリズムは25時間周期
本来、体内時計は約25 時間の周期ですが、外部環境の24 時間に同調させています。その同調因子としては光が最も重要であり、朝の光によって生体時計をリセットし、そのズレを修正しています。
光の入らない部屋で生活すると、起床時刻がおよそ1時間ずつ遅れていきます。朝に起きても、暗い部屋のなかで過ごしていると、体内時計はリセットされないために、寝つきが遅れていきます。
朝の太陽光とともに、昼間の明るい環境と夜の暗い環境の変化、3 度の規則的な食事、日中の習慣的な運動は、生体リズムの同調因子として大切な役割りをもっています。
25時間周期のサーカディアン・リズムと1.5~2時間周期のウルトラディアンリズム
人間の体内リズムにはいくつかの周期があります。1年周期や1月周期があり、月経などはこれによるものとされています。1日周期(実は25時間)はサーカディアン・リズムと呼ばれますが、さらに短いのがウルトラディアン・リズムで1.5~2時間周期です。
レム睡眠とノンレム睡眠の周期もこれに関連しているのではないかといわれています。(下図の黒の点線のサイクルがウルトラディアン・リズムです)