かつては、結婚するときに揃える布団やベッドはダブルが当たり前という時代があった。それは神田川の三畳一間の延長にある二人の世界を象徴していたのだろうか?それは一方で、6畳の部屋に婚礼箪笥を入れると、ダブルしか使えないという現実的な事情もあったのだが。
今日ではシングル2つを選ぶカップルが増えている。眠るという行為を最適化するための空間として考えると、それぞれの体質に合わせて素材の厚さや質を選ぶことができるシングル×2はベストといえるだろう。布団の取り合いをすることもなく、寝返りのスペースに困ることもない。
眠りのプロフェッショナルとして、お客様にそうすすめながらも、心のどこかで「いや、そうじゃないよね」とつぶやく私がある。睡眠理論で割り切るのではなく、寝室には「閨(ねや)の文化」ともいえる、男と女のコミュニケーションの空間があるべきだろうから。
良質な睡眠のための機能は当然ながら、眠りと閨という両方の意味において、寝具には官能性が求められる。その心地よさが、あなたの、あるいは二人の明日の充実を生み出すことだろう。「ふとんの中の恋」というのも、いいかもしれない。
ねむりはかせ 沢田昌宏