ハンガリーというと何をイメージされるだろうか?あまりピンとこないかもしれない。
モンゴルの騎馬民族を遠いルーツに持つマジャール人のこの国は、布団屋にとっては羽毛の有名な産地ではあるが、そのハンガリーを十数年ぶりに訪れることになった。
数年前から当店に導入したヴァイタルウッドというマットレスのメーカーは、ハンガリーの北西部、ウィーンから百数十キロのブージャルカイニーという小さな街にある。ユニークは木から作ったスプリングを使って天然素材100%のマットレスを作っているのが特徴だ。
出会いは4年前のケルンの家具見本市だった。私たちは、睡眠のために良いマットレスを探すと同時に、環境への配慮のためにできる限り自然素材100%に近いものを求めている。環境先進国であるヨーロッパに、そういったマットレスが多いのである。ただ、ヨーロッパでは横向け寝で寝る人が多いためか、一般にソフト目のマットレスが多い。ところがヴァイタルウッドのマットレスは、非常にしっかりとした、それでいてしなやかに体を受け止める寝心地が仰向け寝が多い日本人には向いているのである。そこで日本で初めて本格的に導入を始めたのだ。
昼食もとらずに続いた6時間近いミーティングと工場見学の中で、彼らがこの製品をどのようにして開発し、こだわって作っているかという思いをひしひしと感じることができた。ウッドスプリング、馬毛、ラテックス、羊毛、綿それぞれの素材が非常に吟味され、機能的に組み合わされているマットレスなのだ。
ミーティング後に建物の外に出ると、まさに夕日がハンガリーの大地に沈もうとしていた。
モノには作った人の思いが込められている。その思いを感じながら、ぜひその寝心地を味わっていただきたいものである。
ねむりはかせ 沢田昌宏