「でんか・・殿下ぁ~」
う~ん、うるさいなぁ。あれ、ここはどこ?やけにゴージャスなベッドと部屋はいったいなんだ?たしか交差点で待ち合わせをしていた時にトラックが突っ込んできたまでは覚えているのだけど、ここは病院なのか? それより殿下、殿下ってなんだ。パタリロか?
ベッドサイドの時計をみると「皇紀2683年4月1日」と表示されている。皇紀?たしか今日は4月3日だったはずだが、時間が戻ったのか? もしかしてエイプリルフールのドッキリ? 日本にいたはずなのに、部屋はヨーロッパ風っぽいよな、どこの世界だ!皇紀というからには日本なのか?・・・
どうやら、かの有名な「トラ転」をしたらしい。年齢も6歳の子供になっているが、意識は前世というか35歳のものと重なり合っている。どうやらヒイヅル皇国 皇太子殿下の三男、親王に転生したようだ。建物や風俗は日本の100年前、大正時代に似ているみたいだ。
この世界では魔法が使える。魔力は個人によって属性が異なっていて、使える魔法も違ってくるのだという。小学校に入る前には魔力検査があるので、入学式の前に受けることになった。
その結果はというと魔力は人外並みに多くあるのだが、属性は火でも水でも、光でも闇でもなく夢と出た。500年以上出ていない稀な属性というが、周りの人間の反応は微妙だ。皇族、しかも三男ともなれば軍に入るのが当たり前なのだが、どうも戦いには役に立てそうにない属性だ、と思われたようだ。
夢属性の魔法は、周りにいる兄弟姉妹には好評だ、眠りと夢を司るので、良い夢をみて気持ち良く眠ることができるそうで、おかげで昼は暇なくせに、忙しい夜の日々を過ごすことになる。2歳下の妹は「押し活よろしく」とばかりに、訳の分からない夢を強要してくる。
自分には魔法をかけることができないそうなので、目下のところ寝不足の日々が続き、昼は毎日うつらうつらだ。18歳になって軍に入ったのだが、「昼行燈殿下」などという不名誉な称号で呼ばれているそうだ。憂鬱である。
今世も周りの国の形は同じで、我が国はR国とか、NK国とか、C国とかやばそうな国に取り囲まれている。下手すると一触即発で戦争だ。困ったモノである。
ところが、ある時、友人のいたずらが原因で、とてつもなく遠距離まで夢の魔法が届くことが判明した。魔力が大きいせいで、この星全体でピンポイントでしかも広範囲に届くのだという。
「これって、とんでもなくチート?」 確かに、飛行機や船に乗って攻めてこようとしても、乗員を即座に眠らせることができるのだ。相手国の将軍様が「弾道ミサイル発射!」と命令しても、周りを眠らせてしまえば、明後日の方向にしか飛ばない・・というか発射すらできない。潜水艦は沈んだままで、一向に浮かび上がってくる気配がなさそうだ。
あれよあれよという間に自分自身が「最終兵器」となってしまった。せっかくなので「帝国の夢Z」(昨年度参照)を見たがる連中には、とびきりの悪夢を送って差し上げた。R国のプッチンプリン君には「泥沼の夢」、C国のプーさんには「泥縄の夢」、US国のドナルド君には「泥船の夢」という具合である。ドナルド君だけ「泥船はグレイトアゲイン」と寝言を言い続けているそうだ。
そんなこんなで、眠りの魔法使いたる私、昼行灯殿下は、合いも変わらずの寝不足の毎日が続くのであった。(第Ⅱ章につづく・・・ってどうよ)
#エイプリルフール