初夏、新緑とともにリネンが心地よい季節である。リネンはさらっとしているから、湿度の高い日本に向いた素材で、軽いリネン生地にくるまって眠る気持ちの良さはこの上ない。
リネンは麻の一種で亜麻という。主にヨーロッパで使われてきたもので、それに対し日本古来から使われてきたのはラミー(苧麻)やヘンプ(大麻)で、リネンより腰のある硬めの素材だ。もっとも近年では大麻は栽培することができない。
リネンはランジェリーの語源でもあり、ベッドリネン・リネンサプライなどの言葉が示すように、元々シーツといえばリネン製のことであった。また、汚れが付きにくいことからテーブルクロス・ナプキンなどにも用いられてきた。麻は綿に比べて吸湿発散性に優れ、熱伝導性にも良いことから夏に向いた素材である。・・・と思い込んでいたのだが、リネンの細番手生地は肌触りがソフトなので、実は冬でも気持ち良く使えるオールマイティの素材でもある。
そんなリネン生地の一大産地、リトアニアを訪れたのは昨年9月のこと。ラトビア国境に近いビルザイという街にシウラス社はある。マスターオブリネンの認定を受けた有数のメーカーで、リネンのシーツや敷パッドのオリジナル生地を作ってもらうためだ。紡績から製織まで一貫して行う大きな工場なのだが、ロットが小さく済むのでカラフルな生地を揃えることができる。人気の本麻クール敷パッドの今年のバージョンは表はヘリンボン織りで、裏面は平織で両面つかえる7色展開だ。
多くのユダヤ人をビザで救った杉原千畝で日本とは縁少なからぬリトアニアの風は、まるでリネンをまとうがごとく実にさわやかなのであった。
ねむりはかせ 沢田昌宏