「そちらで扱っている羽毛布団もバティスト生地との事ですが、やはり吹き出しますでしょうか??」
あるお客さまからのお問合せです。バティスト(平織)生地で羽毛が吹き出すという口コミ投稿で気になったとのことでした。
大塚家具さんのダウナなどに代表される、ヨーロッパ製の羽毛布団を使っていると、側生地から羽毛が吹き出してくることがあります。ダウナ羽毛布団の場合は、生地の打込みが甘いのと羽毛にダウンファイバー(羽毛ゴミ)が比較的に多く、吹き出しが出ているようです。リフォームで持ち込まれるダウナ羽毛布団でも上記の吹き出しが出ています。
私どもで扱っている ドイツWeidmann社のTE270やTE200などのヨーロッパ製平織生地(バティスト)でも、ダウンファイバーが多いレギュラークラスのグースダウンを使うと吹き出しやすいので、通常は440dp以上のプレミアムゴールドクラスか、手選別のステッキーダウンやアイダーダウンだけにしています。
バティスト(平織)は本来、羽毛は吹き出しにくい構造
羽毛布団に使われる生地には、織り方によって、サテン(朱子織)、ツイル(綾織)、バティスト(平織)と分けられます。この3種類の中で、じつはバティスト(平織)が最も吹き出しにくい構造です。
日本で最も多く使われているのがサテンですが、このような構造になっています。
光沢があって、ソフトな肌ざわりが特徴です。一方バティスト(平織)は
経糸と緯糸が交互に交差していますので、しっかりした構造になっています。本来でいえばバティストの方が吹き出しにくいのです。
特に洗濯後は顕著で、通気度変化が少ないのがバティストです。一方サテンは通気度が大幅に上がるために、丸洗いしたら吹き出しが出てきたということがあります。
原因:ヨーロッパ製の生地は通気性が良い(良すぎる)ため、羽毛が吹き出しやすい
吹き出しの原因は織り方よりも、生地の通気度(cc/s)によります。一般的には、羽毛布団の生地には羽毛の吹き止め加工(ダウンプルーフ)がなされています。日本は、生地から羽毛が出てくると「不良品!」とクレーム扱いされることが多いため、ダウンプルーフを強くかける傾向があります。そのため、通気度は規格上では3.0cc以下ですが、実際には1.0~1.7cc/s程度と抑えられているのがほとんどでした。
一方、羽毛布団の歴史が長いヨーロッパでは、羽毛布団から吹き出しが出ることに対しては、拒否感がありません。そのため、ヨーロッパ製の羽毛布団生地は5.0cc以上、中には10ccの通気度がある生地もあります。
加えて通気度は仕上げで微妙にばらつくため、ロットによっては吹き出しやすい生地があります。実際過去にはHefel社の生地で、吹き出すはずがない組合せで吹き出したこともあり、結構悩まされました。
日本羽毛ふとん地流通協会ではサテンで3.0cc以下、平織と綾織で3.5cc以下と規定されています。
洗濯や使用年数によって、ダウンプルーフは甘くなる
また、羽毛布団の洗濯をしたり、長年使っている内にダウンプルーフは甘くなる傾向があります。特に洗濯は1~2cc以上通気度が上がることが多いのです。
そのため、ファイバーの多い中・低級ダウンの入った羽毛布団を丸洗いすると、通気度が3ccを超えてしまい、吹き出しが多くなるため、かつて生地メーカーは羽毛布団を丸洗いしないように指示していました。今でも羽毛布団は丸洗いできない洗濯表示(ドライ指定)になっています。
繊維断面が真円に近いポリエステルなどの合成繊維は、羽毛が吹き出しやすいために、洗濯後も考えて通気度を0.7ccなど非常に低く抑えているものがほとんどです。その結果、吹き出しにくいものの、通気性が悪く蒸れやすい羽毛布団になります。
羽毛にダウンファイバーやネックフェザーが多いと吹き出しやすい
このように、羽毛がダウンボールばかりであれば、吹き出しのリスクは低いです。実際に絡みの強いアイダーダウンやステッキーダウンは吹き出しにくい羽毛です。
ところが、現実にはそのようなダウンは非常に少なく、羽毛ゴミと呼ばれるダウンファイバーや尖った(ダウンジャケットなどから出やすい)ネックフェザーが多いと吹き出しやすくなります。
一般的にはグースダウンに比べるとダックダウンの方が、ゴミや未成熟ダウンが多い傾向にあります。ダックダウンに限らず、未成熟ダウンが多い中・低級の羽毛は、使用しているうちに未成熟ダウンが壊れて、ダウンファイバーになるため、吹き出しリスクが高いのです。
眠りのプロショップSawadaで使用している羽毛布団用生地
ドイツ製のTE270とTE200は通気度が5.0cc以上あるため、通常はアイダーダウン・ステッキーダウンなど絡みの強い最高級羽毛しか使いません。440dpのハンガリーグースダウンでぎりぎり使えるところです。
オリジナルのS9100は3.5ccと、日本の規格上限で仕上げました。400dpロイヤルゴールドラベル以上のホワイトグースダウンであれば問題ありません。
オリジナルのSB8080は、上質のダックダウンでも使えるように、通気度を2.6ccとしていますが、中・低級クラスのダックダウンはぎりぎり使えるかどうかというところです。
サテン系はドイツ製AD200であっても、通気性はあまり高くありません。これはサテンは洗濯後の通気度がかなり上がるためにと思われます。
品番 | 織り方 | 糸番手・打込 | ㎡重量 | 通気度 | 側総重量 |
---|---|---|---|---|---|
S60 | サテン | 60/60 370本 |
約136g/㎡ |
1.3cc |
1070g |
WS8800 | サテン | 80/80 405本 | 約114g/㎡ | 1.7cc |
960g |
SB80 | 平織(バティスト) | 80/80 320本 |
約94g/㎡ |
2.6cc |
775g |
SE1014 | サテン | 100/140 調査中 |
約101g/㎡ |
1.1cc |
850g |
TE135G | 平織(バティスト) | 80/80 307本 |
90g/㎡ | 調査中 約4.0cc |
750g |
SB100 | 平織(バティスト) | 100/100 350本 |
約85g/㎡ |
3.6cc |
710g |
TE200 | 平織(バティスト) | 110/110 351本 |
約75g/㎡ |
5.0cc |
660g |
TE270 | 平織(バティスト) | 120/150 380本 |
約69g/㎡ |
6.0cc |
595g |
AD200 | サテン | 120/120 485本 |
約94g/㎡ |
1.5cc |
775g |