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ねむりの部屋 Vol.37 夏は夜。月のころはさらなり

 

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枕草子が生まれた平安時代の貴族の館は寝殿造りという高床式である。古来より蒸し暑い日本の夏を快適に過ごすには、部屋の通気性を良くすることにより、気化熱を奪い温度を下げるような工夫がなされてきた。その反動として冬の保温性は犠牲にされてきたのである。

快適な睡眠環境は温度33℃湿度50%と云われるが、夏は湿度をいかにして下げるかが大きな課題となる。今日の住宅は気密性が高くなってしまったために、寝具には冬の2~3倍の発汗を素早く吸収して、発散させるしくみが必要なのだ。

このために古来から使われてきたのが麻である。「涼を抱いている」と評される麻は、吸湿発散性が良く湿気をうまく逃がしてくれる。また、熱伝導性が良いので、熱のこもりが少ない。日本の夏には最適な素材なのである。巷に多く販売されているポリエステルわたの夏物寝具と比べると、その差は歴然としている。

中でも「近江ちぢみ」は独特のしぼにより、吸湿発散性や熱のこもりがさらに向上した、夏にぴったりの素材である。よく似た素材に「高島ちぢみ」があるが、こちらは綿素材を中心としたもので、麻素材から生まれる「近江ちぢみ」は別格と言えるだろう。

人工素材による涼しさでなく、天然素材から生まれる涼しさは、結局のところ得られる睡眠の質が違うと思う。自然な眠りこそが、健康的な暮らしを支える最も重要なことなのであろう。

 

ねむりはかせ       沢田昌宏

 

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