「蛍の光、窓の雪」-蛍雪の功といっても知らない世代が増えている。受験勉強は現代の問題だけではなかった。中国では古くから科挙と呼ばれる官僚登用試験があり、進士への及第を目指し、寝る間も惜しんで苛烈な勉強を行ったという。蛍雪とまでは言わないが、蝋燭一本の灯りで勉学にいそしんだのは、ほんの70~80年ほど前の話である。
今日、子どもたちは光に包まれている。LEDという光に。省エネ節電ということもあり、LED照明は家庭・店舗を問わず一気に増えた。最も多くLED光に曝されるのは大型テレビとスマホやタブレット、ゲーム機に代表される携帯端末だ。
学生のスマホ依存症で、睡眠が著しく低下しているという新聞記事を読んだが、さもありなん。LEDの分光分布は青白く、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を抑制する波長帯に偏っているのである。睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも大きく影響が及んでいるのだ。睡眠のためには電球の灯りのようなものが一番良い。
徹夜の勉強は身につかないという経験則があるが、これは本当で、学んだあとしっかりとした睡眠をとることで記憶は整理され固定されていくことが実験でも証明されている。一旦学んだことは脳の長期記憶に整理してもらいたいのは誰しもだろう。これは勉強のような情報だけでなく、スポーツなど体で覚える運動系も同様である。規則正しい生活リズムと睡眠が、記憶や運動神経の働きを助けるのである。
特に小さな2~3歳のお子様をお持ちの方にお願いをしたい。ビデオに子守をさせないこと。生活のリズムを作って良い睡眠をとること、灯りで眠らせること。
たったこれだけで、大きくなってからの苦労が減ると思えば、容易いことのように思われるのだがいかがだろう? 三つ子の魂百までというではないか。
ねむりはかせ 沢田昌宏