快適な眠りと寝具の話になると、一番出てくるのが枕の話である。今でも、「快眠できる枕ありませんか?」と頻繁にお問い合わせをいただくが、正解は「枕だけでは快眠できません」である。結論から申し上げると「枕は敷寝具の一部だから、敷寝具のほうが重要で、枕は敷寝具にあわせてバランスよく選ぶ」ということなのだ。「いくつ変えても枕が合わないの」という方は、ほとんどの場合、敷寝具に問題をかかえていると言っていい。
頸椎の高さを測って自分に合わせた枕を作るというサービスもある。これも、使用している敷寝具の沈み込みによって高さは変わるので、作ってみたけど思ったほど合わないということも多い。枕を測るときには日常使う硬さに合わせないといけないし、敷がヘタって腰が落ち込んでいたりすると、姿勢そのものが異なってしまう。敷の硬さによっても、筋肉の負担は微妙に変わってくるので、実のところ一筋縄ではない。
もう一つ大きな問題は寝姿勢だ。オーダー枕でも頸椎高の高さで見ることが多いのだが、横向き寝中心の場合には、あまり意味をなさない。この場合重要なのは、肩の出っ張りをうまく受けて、横から見て背骨が一直線になるようにすることであり、これも敷寝具の問題が大きい。横向き寝は女性に比較的多いが、敷が硬いと肩が圧迫を受ける。すると肩の周辺で筋肉が緊張を強いられるために、肩こりの原因ともなる。
背骨はヒトの健康を支える屋台骨でもある。ストレスの少ない寝姿勢をキープして、背骨を無理なく正しい姿勢で支えることは、快適な睡眠にはとっても重要なのだ。枕が支える頸椎はその延長にあるが、どちらが大切かといえば自明であろう。
あなたに合う枕はどこにあるのか、答えは敷寝具の中にある、といえるのだ。
ねむりはかせ 沢田昌宏