かさ高を表す指標。羽毛布団ではダウンパワー、ダウンジャケットではフィルパワーが使われる
羽毛のかさ高を表す指標としてダウンパワー(dp)とフィルパワー(FP)があります。いずれも一定の羽毛の量に対し、どれぐらいの嵩だかが出るかを示します。数が大きいほど、良い羽毛ということになりますので、羽毛布団の説明には400dpとか440dpなどと表示されています。
ダウンパワーとフィルパワーは検査機関によって行われますし、羽毛工場では自社の検査機能を持っているところも多いのです。日本だとカケンやQ-TECなどの検査機関があり、世界的な組織としてはIDFLがあります。
ヨーロッパではフィルパワー表示が一般的です。日本は羽毛布団はダウンパワーを、ダウンジャケットなどは、ワールドワイドなメーカーも多いのでフィルパワーで表示されます。
Q-TECの説明の方が詳しいので、こちらをご参照ください
羽毛の良し悪しを決める前提としての羽毛の組成、つまりダウンやスモールフェザーなどについても詳しく説明されています。
ダウンパワーとフィルパワーは必ずしも一致しないし、実際の品質とも異なる
普通に考えるとダウンパワーとフィルパワーは正比例するはずです。ところが、しばしば逆転現象が起こったりします。例えば
PPST98 ポーランドプレミアムステッキ―グース ダウン率98%。手選別で得られるアイダーを除けば最高峰の羽毛ですが、直近の羽毛ですとダウンパワーは470でフィルパワーは920
PPMG95 ポーランドマザーグースの最高峰 ダウン率95%はPPST98と比べるとダウンパワーは470で同じですが、フィルパワーはなんと1010もあります。
数字だけ見ればPPMG95の方がフィルパワーで優っているので、良い羽毛ということになりますが、実際に羽毛布団を作ってみると、なぜかPPST98の方が嵩がでます。実際に私どもの定番カタログでも、シングルの中厚を作るのにPPMG95は750gですが、PPST98は700gです。これでほぼ同じぐらいのかさ高になります。フィルパワーを信じれば、逆にならないとおかしいのですが、現実はフィルパワーの数値と実際のかさ高は必ずしも一致しません。
検査機関によっても、数値が異なってくる
通常は大きく差がでるはずはない、検査機関によるテストですが、今年、ある検査機関では460dpの数字が出た羽毛がありました。しかしながら現物はそこまでのパワーとは思えなかったそうで、別の検査機関に出したら420dpほどでした。実際、羽毛を入れて作ってみましたが420dpぐらいのかさ高です。
それぞれに送付した試料にムラがあったのかもしれませんし、原因はなぜなのか、いまだに不明ときいています。
試料は30gを2つ出すことになっていますが、意図的に良い部分を選んで試料にしたら、本来のものとかけ離れてしまいます。販売戦術上で、どうしてもこの原料は440dp欲しいとか・・・いろんな話を聞きます。
パワーアップをかけると一時的に嵩がでる
羽毛メーカーでは××アップ加工など、羽毛を開かすパワーアップの加工を施しています。確かに本来の良さを戻すという点では、正しいアプローチですが、この加工、しばらくするとパワーダウンしてきます。つまり、パワーアップをかけた直後の試料を元に検査機関に依頼すると良いダウンパワーの数値がでることになります。
ダウンパワーの数字にこだわってはいけない
しばしば430dpと440dpとどう違いますか?とお客様からご質問を受けます。430dpだとロイヤルゴールドラベル、440dpからはプレミアムゴールドラベルになるので、マーケティング的にいうと、メーカーからすると440dpの表示したいところです。
私の店の実例をもう一つ
PWG93S 当店のおすすめポーランドグースです。430dpでダウンボールもしっかりして、ホコリの少ない良い羽毛です。
PST95N 訳ありですが、ポーランドの手選別でより分けられた、ステッキ―タイプ(絡みの強い)羽毛です。これも430dp表示です。(検査票では438dpとなっているので、切り捨て表示になります。
これもシングル中厚を作る場合 PWG93Sは850gですが、同じ430dpのPST95Nは800gです。実際PST95Nは、ヨーロッパカウフマン社でかさ高19cm(450dpクラス)のグースよりもゴミが少なくダウンボールが多くしっかりしています。
410dpのマザーグース?訳わかりません
昨今410dpや420dpのダウンパワーでマザーグースを謳う羽毛布団が増えてきました。いい加減にしてほしいと思います。本当のマザーグースでしょうか?410dpしか出ないマザーグースって訳わかりません。
結局、良い環境で育っているかどうかが品質の決めて
実際に羽毛布団を作っていると、羽毛の良し悪しはダウンパワーの数字では測れないことが多いのです。ダウンパワーやフィルパワーは一つの目安にはなりますが、それをもって品質の優劣を判断するのは早計でしょう。
結局、良い環境で丁寧に愛情を持って飼育された鳥から得られる羽毛が良いということになります。