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羽毛布団に使う羽毛の産地偽装とその背景について

グース8
目次

フランス産と称する羽毛の多くが産地偽装であるという報道

2016/5/7朝日新聞にフランス産羽毛の多くが産地偽装されているという報道がありました。業界では噂になっていたようで、自浄作用が働くのかどうか、興味を持ってみたいと思います。

羽毛布団 産地偽装か仏産表示の半分超
羽毛布団産地偽装 朝日新聞記事

他人事のようですが、私の店にとっては正に他人事です。当たり前のことですが、4年前からトレーサビリティの取れた羽毛に切り替えを行っておりましたし、もともと自分の店で製造直売しようとしたきっかけは、25年近くになりますが、羽毛の偽装がきっかけでした。

産地偽装でTBS「ひるおび」に出演(2016/5/9)

産地偽装報道(2016.5.7)があって、TBSの番組「ひるおび」に羽毛の専門家として出演をしました。今回は西川関係の業者は出演できるはずもなく、日羽協の関係者も出ることができず、ということで独自に羽毛を選んで自分で作っている私に白羽の矢が当たったらしいです。

店主が羽毛布団の専門家としてTBSの番組ひるおびに出演

眠りのプロショップSawadaで販売している羽毛は産地の確実な安全なものだけです

スリープウェル・カウフマン社(現在は中止)

カウフマン社は世界でも一二を争う羽毛原料ベンダーです。毎年1月ドイツ・フランクフルトで開催されるハイムテキスタイル見本市において、メッセスペシャルと呼ばれる限定の、特に絡みが強いステッキーホワイトグースダウンを輸入しています。

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スリープウェル・カウフマン社とは20年以上にわたってお付き合いをしておりましたが、2019年にブレゲンツの工場を売却したため、自社での洗浄分別ができなくなりました。その為取扱いを中止いたしました

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ポーランドでも最大級の畜産事業者で、同時に高品質のポーランドグースを提供しています。当社では最高級の手選別ステッキ-グースダウンを扱っております。

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ドイツのピーターコール社も高い品質の羽毛を提供する羽毛ベンダーです。当社ではFP1000という、最高レベルのポーランドマザーグースを取り扱っております。

河田フェザー株式会社

河田フェザーも日本のトップベンダー。日本の羽毛の歴史を作ってきたといってもいいメーカーです。20年以上原料を扱っていますが、品質の良さと安定は抜群です。鈴鹿山系の軟水で洗浄しているために、非常にきれいな羽毛です。

河田フェザーも4年前から、トレーサビリティの取れた確かな羽毛だけを扱うとされており、当店もそれに準じています。永年扱っていたシベリアンスノーホワイトグース450dp、ハンガリーホワイトグース400dpについては、トレーサビリティの確保ができないため扱いを中止しました。もちろん原料自体は非常に良いものだったのですが、周辺国原料などの混入が疑われるためです。

このトレーサビリティはダウンパスと呼ばれます。ダウンパスについてはこちら

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さらには、有害物質のない安全な羽毛であることを保証するエコテックス100規格クラス1を取得しており、赤ちゃんでも安全な羽毛です。

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現在は ポーランドホワイトグース440dp・430dp・410dp、ハンガリーホワイトグースグース440dp、台湾ローマンホワイトグース400dp、フランスピレネーホワイトダック(ミュラー種)400dpを扱っています。いずれもトレーサビリティの取れた羽毛です。

なおPST95N ポーランド手選別ステッキ―ホワイトグースダウンについてはトレーサビリティが取れません。ただし、羽毛自体は非常に高品質で良いものです。トレーサビリティが無い分、デパート等には出回らずコスパが良いので、この場合は反ってメリットとなっています。

ということで、原料については店主が自ら厳しくチェックしています。ご安心下さい。

ずっと前から続いている悪しき商習慣

実はこのようなことは以前から公然の秘密として行われてきた部分があります。もちろん業界も是正に取り組んできたものの、相変わらずのいたちごっこです。

2001年羽毛原料輸入実績
2001年羽毛原料輸入実績

今から20年以上前、2001年の状況はこの通りです。

この時点でも中国・台湾からの羽毛輸入量が圧倒的で、ハンガリー・ポーランド合わせても6~7%しかありません。しかし、市場では実に多くの羽毛ふとんがヨーロッパ産と表示されていました。

横行していた産地、羽毛の種類、ダウン率の偽装

産地だけでなく、ダウン率や、鳥の種類偽装までが横行していたので、日本羽毛製造協同組合(日羽協)は毎年羽毛ふとんの試買を行い中身の現状を発表する(といっても業界向けだけ)と同時に、日羽協が発行するゴールドラベルの発行停止などの処分を行ってきました。

2002年日羽協試買テスト
2002年日羽協試買テスト
2003年日羽協試買テスト
2003年日羽協試買テスト

このように毎年のように、ダウン率違反、羽毛表示違反がそこら中で行われてきました。ただ、産地については今回のようなテストができないために「疑わしい」としかいえなかったのです。実際羽毛の輸入先を見れば一目瞭然で、もちろん中国・台湾経由でヨーロッパ産が入ってくることもありますが、その途中が怪しいわけです。平均単価を見てもらえば一目瞭然ですね。

2012年頃からの羽毛高騰がさらに引き金に

特に2012~2013年には羽毛が高騰しました。ライブ・プラッキングが禁止されたこともありますが、グースは2倍、ものによっては3倍以上の価格になってしまいました。この状況は現在でも変わりません。グースは高いままで、ダックは以前より少し高い程度になっています。

その結果増えたのがグースへのダックの混入です。それと、それまでポーランドやハンガリーのダックダウンってほとんど出回っていなかったにもかかわらず、それまでハンガリーグースと称していた(これ自体結構怪しいものが多かった)呪縛から逃れられないのか、ハンガリーダック、ものによってはハンガリーマザーダックなどという意味不明な羽毛が多く出回るようになりました。(ハンドプラッキング:手摘みが禁止になったために、マザーダックがあったとしてもと殺後にしか羽毛は得られないので、通常潤沢に出回るなどありえないのです)

これは、中国や台湾の羽毛業者が、「ポーランド産ですよ」「ハンガリー産ですよ」「マザーグース、マザーダックですよ」と謳えばそのまま表示してしまうという悪しき商慣習があり、逆に言えば、羽毛ふとんメーカーがそれらの業者にそのような表示を暗に促していた、あるいは業者が忖度して表示していたなどが考えられます。

安かろう悪かろう

羽毛は農産物です。良いものは手間暇をかけ、じっくりと育てています。よほどの理由が無い限り大幅に安くなるなんてあり得ないのです。しかも、良質の羽毛の量は限られています。そうでなくてもダウンジャケットなどアウターの需要が多いなかで、使う量が多く単価を安くしなければならない寝具では、量販店などで良質の羽毛を安く大量に手配できる状況ではないのだと考えます。

この報道がきっかけになって、本来の業界のあるべき姿に戻って欲しいと思います。

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