テレビで毛布は布団の上に掛けるといわれたが
しばしばテレビ番組で毛布は布団の上に掛けるものだと紹介されています。つまり上の画像のように布団の上に掛けるということになります。
しかし、かつては毛布は布団の内側に掛けるものでした。つまりこのような感じです。
本当はどちらが正しいのでしょうか? まず結論から
結論1:羽毛布団は天然素材の毛布を下に使う
アクリルなど合成繊維の毛布は汗の吸収が悪いので、暖まると蒸れて毛布を蹴ったりすることが多いのです。羽毛布団が持つ良さを生かすには、天然素材、できれば吸湿発散性の良い動物性(ウール・カシミヤ・キャメル・シルク)の軽い毛布を推奨します。
結論2:羽毛布団で合成繊維毛布は上にかける
上記の理由で上にかけます。重い毛布(二枚合わせ)だと羽毛布団の嵩が抑えられてしまうので、軽量(一重)にしましょう。これらの毛布は滑りやすいので、別に毛布である必要はありません。肌布団やキルトなどでも問題ないと考えます。
極端な寒がり、冷え性の場合は発汗量も比較的少ないので、保温性が高くて軽い合繊繊維を下に使ってもいいでしょう。自分が快適に眠れるかどうかで判断してください。
結論3:羽毛布団用の冬用暖かいカバーは綿素材のものを選ぶ
毛布の代わりに、冬用の暖かい素材のカバーを使うこともいいでしょう。この場合、軽い綿素材のものを選ぶことが大切です。アクリルやポリエステルを使ったものは、羽毛布団の良さを活かせません
結論4:合成繊維や木綿わたの布団は下に使う
毛布の持つ接触温感や保温性を活かすには、下に使うのがベストです。上に掛ける必要性は全くありません。
補足:部屋と敷寝具の保温性を上げること
昨今の高気密高断熱住宅の場合は、部屋の温度が17℃程度に保たれることが多いので、そもそも毛布の必要性が低いのです。ガーゼやニット、フランネルなど冬向きの綿素材のカバーの使用で十分なことが多いです。
また、床に敷で寝ている場合は、床に熱が逃げることを防ぐのが第一です。マットレスと羊毛敷布団のように二枚敷にして、保温と吸湿発散を確保しましょう。その上にムートンシーツやウール系の敷毛布を使うとさらにベストです。
羽毛布団の場合は、天然素材の軽量毛布を下に使うのが基本
単純に暖かければ良いというわけではない
快適な寝床内温湿度33℃50%をキープするためには、吸放質性の良い天然素材の毛布が一番
今日住宅環境は、高気密・高断熱とかつての日本家屋とは様変わりしています。かつてのように絶対的な保温力が求められるのではなく、快適な寝床内温湿度(33℃50%)をいかにキープするかが課題になってきました。温度コントロールだけでなく、どちらかというと湿度コントロールの方が重要になってきているのです。
アクリル・ポリエステル繊維などの毛布はおすすめしない
ポリエステル、アクリルなどの毛布は基本的に汗を吸うのが苦手です。寝具が暖まって33℃になったときに、湿度が高くなって蒸れやすくなります。基礎代謝量の低い寒がりの方ならともかく、一般的な体質の場合避けた方がいいでしょう。
発熱繊維などの特殊な毛布はどうかというと
通販などで汗を吸って発熱する繊維を使った毛布が紹介されています。
シアンアクリレート系繊維には汗を吸って発熱する機能があります。(ブレスサーモなどの商標がそうです) これらの機能は元々ウールやカシミヤが持つ吸着熱、つまり水分を吸って発熱することを合繊で実現しています。天然素材ほど微妙に温湿度を調節してくれるわけではありません。
アルミを入れて保温性を上げる毛布もありますが、湿気を逃がすのは苦手なので蒸れやすくなります。
天然素材でも綿100%の毛布は暖まりにくい、ウールやカシミヤなどの獣毛系がベスト
綿毛布は保温性はあまり期待できません。吸湿性は良いのですが、湿気を逃がすのが不得意な素材です。湿気があるまま使うと暖まるのが遅いのです。男性などで暑がりの方であれば、綿毛布でも十分かと思います。
吸湿発散性が良いのは動物系の天然素材です。ウール、キャメル、カシミヤ、アルパカ、ビキューナなどの獣毛系です。接触温感が高く、吸着熱があり、即温性も優れているので一番のおすすめです。
昔からのウール毛布にはチクチクするものも多いので、風合いの良いものを選びましょう。
シルク(絹)は肌に一番優しいので、即温性は若干劣りますが気持ちよく使える素材です。
身体に隙間を作らないことが保温の基礎
ウールやカシミヤの毛布を身体に密着させて使うと、寝返りしても暖かい
そもそも保温とは、身体の熱を逃がさない、ということです。逃がさないためには、断熱性の良い素材=空気が多くあればいいので、嵩がある布団は暖かいということになります。
ただ嵩があれば(=ふっくらしていれば)いいのかというと、身体へのフィット性が悪い布団は、身体の周りに隙間が出来て、そこから暖まった空気が逃げてしまいます。
このことから、重い毛布を上から押さえて、身体と密着させるという話は一理ありますが、掛ふとんは軽いほど体へのストレスが少なくなります。ウールやカシミヤなどで比較的薄い毛布を身体に巻き付けるように密着させることにより、身体の周りの空気を逃がさないようにしましょう。肩が冷えにくくなりますし、抱擁感があって安心できます。それから掛布団をかけるようにすることをお勧めします。
毛布を使う意味は、その接触温感にある 直に使うべし
毛布が暖かく感じられるのは、表面が起毛やボアになっていて接触温感が高いためです。毛足があることで、暖まった空気を逃さないようにします。ですから、上に掛けていては毛布本来の暖かさを得ることができません。
暖まってくると蒸れやすくて毛布を蹴飛ばしてしまう、という方は、そもそも毛布を必要としません。ガーゼや起毛、ニットなど冬向けのカバーを使うだけで十分かと思います。
眠りのためのおすすめ毛布は?
軽いカシミヤの毛布を内側に使うのが極上
羽毛布団に最適な毛布ということであれば、カシミヤ毛布がベストでしょう。その中でも、イタリア・マラゾット社のカシミヤ毛布は非常にグレードの高いカシミヤを使い、非常に軽いのです。国産の上質のカシミヤ毛布の重量が1200~1300gなのに対し、マラゾット社のカシミヤ毛布は1000g前後、風合いも抜群です。お手頃なカシミヤ・ラムウール混やカシミヤ・アルパカ混もあります。メーカーから直輸入しています。(上の画像はドイツ・ハイムテキスタイル見本市にて マラゾット社ブース)
実際、店主はマラゾットのGEISHA1060gを8~9年使っていますが、保温力と、なによりその気持ちの良い使用感は極上の寝心地をもたらしてくれます。
最近は内モンゴルの上質なカシミヤ工場から生地を取り寄せて作ったカシミヤが抜群の手触りで好評です。
軽量の柔らかいウール毛布
カシミヤ毛布はどうしても高級になりますので、上質で軽量なウール毛布を組み合わせるのもいいでしょう。
寒がりの方はウールボア毛布を
それでもまだ寒がりで、という方は前述のように、羽毛布団の上に軽い肌ふとんを使うのがおすすめです。カシミヤまでは、という方にはウールボアの毛布がおすすめです。一般の毛刈りした純毛毛布と違い毛足が長いので、暖かさを実感することができます。
なぜ「上に掛ける」となってしまったのか
確かな説はありませんが、おそらく羽毛布団が登場してからだと思います。今から30年ほど前、掛ふとんの主流は木綿わたでした。それに保温性を上げるためにアクリルの2枚合わせの毛布を組み合わせて使うのが主流でした。アクリル2枚合わせの毛布(カールマイヤー毛布といいます)は重量が2.4~3.0kgにもなり、かなり重いものです。
羽毛布団が急速に普及したのは1980年代後半から1990年前半にかけてです。羽毛は呼吸していますので、身体に直接使った方がその温湿度の調整能力は最大に活かされます。アクリルやポリエステルなどの合成繊維の毛布を下に使うと、その良さが活きてきません。
まだまだ重い2枚合わせのアクリル毛布が多かった時代です。羽毛布団の良さを活かすためには、毛布を上に掛けるように説明されました。おそらく、今日毛布を上に掛けるという考え方は、ここから派生しているのだと思われます。
重いアクリル毛布を載せると、羽毛の嵩が抑えられて保温力は低下する
アクリル2枚合わせ毛布のような重い毛布を載せると、羽毛布団は押し潰されます。重量で身体へのフィット性は向上しますが、保温力の源である嵩は減ってしまいます。結局、毛布の保温力で相殺されるわけですが、本末転倒ですね。
重いアクリル毛布(特に2枚合わせ)は今日の新しい住環境に全くあっていません。昔からの保温性が低い住環境以外では止めるべきです。
一重タイプのニューマイヤー毛布と呼ばれるアクリル毛布は重量が1.8kgクラスなので、どうしても使いたい場合は、このタイプにしましょう。
上から掛けるのであれば、毛布でなくて肌ふとんかキルトを
毛布は本来柔らかく暖かい接触温感を感じるための物ですから、上に掛けてしまっては、毛布を使う意味がありません。その上で羽毛布団1枚で保温性が足らない場合は、軽い肌ふとんやキルトなどを羽毛布団の上に掛けてください。フリースのような軽量毛布であれば、上でもかまいません。
ポリエステルなど合繊わたの掛け布団なら下に使った方がベター
アクリルやポリエステルの毛布なら基本は上ですが、掛け布団自体がポリエステルなどの合成繊維系のわたを使ったものであれば、汗を吸わないのは同じですから、暖かさを体感できるように、布団の下に使った方がいいでしょう。
(汗を吸わない掛け布団は、当店ではおすすめしていません)