最近、羽毛布団用生地にポリエステル混が増えています・・・が使ってはいけません
10年ぐらい前まで、羽毛布団用の生地といえば綿100%が大半でした。ポリエステル混の生地はウォッシャブルタイプの羽毛布団・羽毛肌ふとんや量販店の低級品に使われるのがほとんどでした。
ところが2016年秋冬物展示会で西川産業(東京西川)・昭和西川・京都西川の3社を回りましたが、低級品はもちろんのこと中級~高級品もほとんどが綿・ポリエステル混、あるいはリヨセル・ポリエステル混でした。
なぜポリエステル混が増えたのでしょうか?
これには2つの理由があると考えています。
1:5年ほど前に綿花が暴騰したために、安いポリエステル混にシフトした
2:羽毛が同時期に高騰したため、コストダウンを図るため
2011年に綿花相場は一気に3倍近くにも跳ね上がりました。この前後に羽毛の相場も倍に高騰したために、綿素材中心だった羽毛布団生地は一気にポリエステル混にシフトしました。
一般にポリエステル混の生地は、綿100%の素材よりも軽量です。綿素材が110~140g/㎡であるのに対し、85~110g/㎡ぐらいです。もちろん一口にポリエステル混といっても綿55%高機能ポリエステル45%といった高機能版もあれば、綿15%ポリエステル85%のような価格訴求型までいろいろですが、生地そのものが軽いために、中に充填する羽毛の量を減らすことができるのです。
例えば平均的な60番手綿サテン(135g/㎡ぐらい)で羽毛を1300g入れるとすると、100g/㎡のポリエステル混の生地なら1150gぐらいで、ほぼ同量の嵩がでるからです。
同じ時期に羽毛原料も高騰したために、ポリエステル混素材にすることは、充填する羽毛の量を減らすことができるという面でも一石二鳥の効果があったからです。
ポリエステル混生地は吹き出しやすく、汗を吸いにくい
ところが、ポリエステルやリヨセルなどの繊維は羽毛が吹き出しやすい欠点があります。
その理由は繊維の断面が円に近いからです。繊維の表面がつるっと平滑なために、羽毛の中でもネックフェザーと呼ばれる、非常に細くてとんがった繊維が生地から吹き出しやすくなります。よくダウンウェアで羽毛が飛び出ていることがありますが、あのようになりやすいのです。
繊維断面図を見ると天然繊維である木綿は大きさや形が不定であるのに対し、合成繊維であるポリエステルは繊維の表面が平滑で真円にちかい断面図になります。
これはリヨセルなどの再生セルロース繊維などでも同様です。そうすると、合成繊維のほうが羽毛が吹き出しやすくなるのです。
合成繊維の生地は強い吹き止め(ダウンプルーフ)加工が必要である
このため、ポリエステル混生地では、ダウンプルーフという羽毛の吹き止め加工を強く掛けないと吹き出しやすくなります。また、このタイプはウォッシャブル素材として使われることが多く、洗濯後の吹き出し防止を考えると、さらに強い吹き止め加工をする必要にせまられます。
通気性が悪いポリエステル混合繊維は蒸れやすい
丸洗いできるけど、蒸れるので本末転倒
一般に綿素材の通気度が1.3~1.7cc/s程度であるのに対し、ポリエステル混合繊維の生地は0.7~0.9cc/sとかなり通気性が落ちます。
かなり通気性が悪いので、もし口にこの羽毛用繊維を当てると呼吸がほとんどできません。ウォッシャブルだけど、通気性が悪く蒸れる羽毛布団になります。
のぞましい通気度は2.5~3.5㏄/s
羽毛の持つ良さ=優れた温度や湿度の調整能力は、空気の出入りがあって初めて実現できます。羽毛の機能を活かすには通気性の良い生地を使うことが必須なのです。
私たちは長年の取り組みから、吹き止めと通気の理想的なバランスは2.5~3.5cc/sであると考えています。もちろん、ホコリが少なく吹き出しにくいステッキーダウンのような羽毛であれば、より通気性の高い(6~8㏄)の生地を使うことができ、さらに機能性がアップします。
理想的な生地は細番手の綿100%平織で通気度3.5㏄
理想的な生地は100番手以上の細番手の生地を使い、軽量(90g/㎡以下)で通気度が品質基準ぎりぎりの3.5㏄ぐらいになるものです。このためには、洗濯しても安定的な平織のほうが望ましいのです。
一つの答え SB100(100番手+85g/㎡+通気度3.6cc)
この条件を満たすのは眠りのプロショップSawadaオリジナル羽毛布団生地SB100です。
インド超長綿の100番手単糸を平織にして、カムフィット加工というソフト加工を2回行い、ダウンプルーフも控えめにかけて、最後に保湿機能のある椿油加工をしています。
元の生地が通気度1.4ccに対し、国産生地としては3.6ccという、規格上限ぎりぎりの通気度に仕上げています。(通気度や風合いは製造ロットによってばらつきが出ます)
通気性が抜群のヨーロッパ製の生地(本当はこちらがおすすめ)
羽毛を使う歴史が長いヨーロッパでは、日本ほど吹き出しを気にしません。また、吹き出しにくい綿の平織が多いため、通気度は4cc~8ccと、日本製に比べて2~5倍以上通気性が良好で、羽毛の良さを活かす生地になっています。
一方で通気度が5ccを超えると、羽毛、特にダウンファイバーのようなゴミの吹き出しが出てくるリスクが高くなります。このため、アイダーダウンやステッキーダウンのような手選別でダウンファイバーが少ない羽毛や、440dp以上の本当に質の良いマザーグース羽毛を使うことが必要となります。