そんなに多くマザーグースやマザーダックがいるのかという疑惑
さて、フランス産羽毛表示なのに中国産が使われていたなどの産地偽装は、前々から行われてきたわけですが、今回の新聞報道によって表に出てきました。もう一つやっかいな表示偽装の疑惑があります。
マザーグースやマザーダックという表示です。卵を産むためには、質の良い鳥が親鳥として選別されます。これらの鳥は体格も優れていて飼育期間も長いので、採取された羽毛は非常に良質であるという説明がなされています。
この説明自体は確かに正しいのですが、それでは日本国内で出回っている結構な量のマザーグースやマザーダックは本当なのか、というとかなり疑わしいのです。
本当に親鳥だけを選んでマザーグースとしているのか、単にグレードの高いものをマザーグースと表示しているのかは、正直判りません。ポーランドでいうと、マザーグースは全体の4~5%ぐらいしか存在していないのです。しかもそのマザーグースから採ったダウンが全ていいかというと、はっきりしません。
良いもの(一例:430dp以上)をマザーグースと称する場合
少し前の話です。私どもでは河田フェザーさんのロシア・ヴァルダイ産(かさ高17.5cm 430dp)を扱っていました。しっかりした羽毛でコストパフォーマンスも良かったので、多くのお客様にお買上いただいておりました。それと同じ原料を使ったあるメーカーの羽毛布団はマザーグースと表示されていました。
このように、ある一定のかさ高がある羽毛を便宜的に「マザーグース」という表記をすることは考えられます。もちろん本当の意味でのマザーグースではありません。
マザーグースとレギュラーグースを混入させてマザーグースと称する場合
同じダウンパワーの場合、マザーグースとレギュラーグースでは10~20%ぐらい価格が異なります。つまり原料段階で混ぜてしまえば判らなくなる可能性が高いのです。
410dpとか420dpなど、レベルの低いマザーグースは、本物だとしたら、出来の悪いマザーグースということになりますし、レギュラーグースを混ぜてしまって、マザーグースと称しているケース・・・本来はあってはならないのですが、業界の悪しき慣習を考えると、十分にありえる話です。
本物のマザーグースとは?
マザーグースは居るのか居ないのか、本当の現状はどうなのかについて、河田フェザーの河田社長から情報をいただき、2018年には店主がポーランドのマザーグース農場を訪問し、2023年には沢田麻由里と沢田光加里の両名がポーランドの農場や研究所を一通り回ってきて、現状を確認してきました。
河田フェザーさんからの情報
河田フェザーの社長、河田敏勝さんからお話を聞いて、ほぼ整理ができてきました。
ポーランドだとコウダヴィエルカ研究所のような、品種改良しながら、その品種のオリジナルグースを管理飼育しているところがあります。(この場合は祖父母農場とでもいえばいいのでしょうか)そこで生まれた雛はマザーグース農場へ販売されます。
マザーグース農場は卵を産むだけの農場です。マザーグースは平均4年、卵を産み続け、季節の変わり目に羽毛が生え替わるタイミングでハーヴェスティング(収穫)を行ないます。これがマザーグースダウンと呼ばれます。
マザーグース農場で生まれた卵から孵った雛は通常の農場で飼育されます。かつては22~25週飼育されていましたが、食肉へのコスト要求から、品種改良によって16週での出荷になっています。品種によっては9~12週でも出荷されます。ここではと殺後にハンドプラッキングされる場合と、マシンプラッキングされる場合の2種類あるそうです。
2018/1 ポーランドのマザーグース農場を訪問
訪問したのは2018.1.12 これでほとんど現状がわかりました。マザーグースは全体の4%程度しかないこと、そこから得られたものがマザーグースであること。これでほぼはっきりしました。