今日、最も一般的な天然素材は木綿(コットン)である。この木綿が日本で本格栽培され始めたのは戦国時代から江戸時代にかけてで、三河や河内で多く栽培されたために、今日でも三河木綿・河内木綿の名が生地として残っている。
それまではというと、高級品は絹、庶民は麻であった。木綿という言葉も真綿(絹わた)に対するものである。麻には苧麻(ラミー)、亜麻(リネン)、大麻(ヘンプ)など幾種類もあるが、日本で古来から使用されてきたのは主に苧麻と大麻。ただ、今日大麻の栽培は禁止されているから、一般に出回るのは苧麻と亜麻がほとんどである。このうち苧麻の細い糸を使った高級な麻布は上布と呼ばれ、近江上布・越後上布などが知られている。
麻の特徴は、木綿に比べて吸湿発散性が良いこと、熱伝導性が高いことである。熱を素早く逃がし、発散性が良い(=気化熱を奪う)ために蒸し暑い日本の夏には最適な素材といえる。特に、亜麻に比べて苧麻は腰があり、皺を付けた布は涼感が非常に優れているので、近江ちぢみとして地元の特産品となっているが、近年は生産が縮小し、座布団用の近江縮みは製造中止となってしまっている。
そんな地元の良い素材を活かそう、ということでオリジナルの麻ふとんや麻の敷パッドを製造直売を始めて十年程になる。中わたにも麻を使った100%天然素材で、涼感加工を施した合繊とは全く違う、涼を身体にいだく自然な気持ちよさが、心地よい自然な眠りにはもってこいなのである。
ねむりはかせ 沢田昌宏