
羽毛布団の価格って、よくわからない? 何が正しいの?
ある店では、メーカー希望小売価格220,000円が128,000円と付いていたり、ネットでマザーグースが69,800円と付いていたり、一方で最高級アイダーダウンは3,300,000円と値段がついていたり・・・羽毛布団は昔から値段の根拠があまりなく、価格の違いがよくわからない、といわれます。
今から30~40年前、羽毛布団の普及期では、高い見せかけだけの定価をつけたカタログを作り、そこから何割引!とう販売がまかり通っていました。正直、私どもも同じようなことを当たり前と思ってしていた時代があります。
あるいは、訪問販売やネットワーク販売などでは不当に高い価格で販売されてきました。そのため、羽毛布団の真っ当な価格っていくら?という不信感が生まれたのです。
そのような経緯もあり、当社ではメーカー製の既製羽毛布団を止めて、自家製の羽毛布団だけに切り替えたのです。
現在当社では、羽毛布団の側生地はロール単位(100m)、オリジナル品は1000m単位で側生地メーカーから買い付け、側の縫製は国内工場に委託して加工していただいています。側生地は国内メーカーとドイツのメーカーのみです。
羽毛は、羽毛原料メーカーから直接買い付けをして仕入れます。羽毛原料メーカーにお願いしているのは「少々高くなっても良いので、良質なロットの羽毛を回してほしい」と伝えています。
国内洗浄羽毛を基本としていますが、ヨーロッパでの洗浄や、中国での洗浄を行った羽毛も一部あります。縫いあがってきた側に、羽毛を充填して仕上げる作業は店舗で行っています。
羽毛布団の価格を、側生地代+羽毛単価×充填量 という明瞭会計を原則にしました。価格訴求のために、見かけ倒しの羽毛を使うということはしたくなかったのです。
品質に妥協しない、というのが当社の手作り羽毛布団なのです。

当社は自家製造しているので、メーカー製羽毛布団よりも安くできる

同じ生地と、同じ羽毛を使った場合、自家製造をしていますので、メーカーの利益分だけ安く提供できます。メーカーの利益の中にはカタログ代やショールーム代、担当セールスの人件費などの経費も含まれます。
ただ、メーカー製は数をまとめて作りますが、当社は1枚ずつ作りますので1枚当たりの加工コストは高くなります。逆に、運送コストは(製造工場→メーカー倉庫)(メーカー倉庫→小売店)が無いのでその分コストカットできます。
一般では安い羽毛布団のために、どのような涙ぐましい努力がなされているか
実際には、さまざまな安い羽毛布団が販売されています。それでは安く売るためにどのような努力がなされているのでしょうか? 推定もありますが、ご紹介しましょう。
1:羽毛布団の側を中国で作る+ポリエステルなど安い素材を使う
テレビショッピングなどの製品はほぼこれで間違いないでしょう。中国製の側生地で、羽毛も中国洗浄の羽毛を使って実質中国製としか言えない状況でも、日本で充填加工をすれば日本製となります。
昔ほどではありませんが、それでも中国製の側生地は、国内縫製よりもかなり安く仕上がります。
当社もかつてはリフォーム用の羽毛布団側に中国製を使っておりました。ただ、安い中国製羽毛側が縫製のそれなりで、なにより独特のニオイが気になることもあり、現在では取り扱いをしておりません。
ポリエステル混やポリエステル100%など合成繊維の側生地は、綿100%素材よりかなり安くできることと、綿100%側よりも30%ぐらい軽く仕上げることができます。
軽い側は、中に充填する羽毛量を減らすことができるのです。側コストを下げるのと、羽毛の量を減らしてコストを下げる二重のコストダウン効果があるのです。

2:安い羽毛を使う
米どころ新潟、魚沼産コシヒカリは最高級とされました。しかし天然の生産物(コメも羽毛も同じ)は最高級品を大量に仕入れたからといって、安くなるわけではありません。逆に大量に揃えようとすると、余分なコストがかかったりします。
さて、そんな新潟でも低級米は存在します。つまり天然の生産物には品質ランクがあるので、低品質な羽毛は、やはり安いのです。大量生産できる合成繊維はともかく、天然の生産物は安かろう悪かろう、良いものは高いが現実です。
安い羽毛を調達しようとして、ハンガリーなどのヨーロッパ産が中国で産地ロンダリングされるのはこのためです。
2016年に大問題となった羽毛の産地偽装の時には、TBSのひるおびの番組に出演しました。ヨーロッパから中国へ輸入して、そこに中国産の羽毛を足し、ヨーロッパ産として中国から日本へ輸出したということでした。一例というか氷山の一角です。

3:大量に生産して、コストを下げる
ニトリに代表される量販系のやり方です。1枚ずつ作るのと1000枚まとめて作るのでは、中間のコストを大きく下げることができます。
テレビ通販も同じ系統です。一回の放送で販売される量がかなり多いので、基本的には西川のようなメーカー直販の形をとり、1:や2:などの手法を絡めてコストダウンします。
この方法は私どもではできません。対抗する気もありませんが、実際対抗できません。
ただし、大量に販売するには、安い価格設定をする必要があり、大量に調達した羽毛に高品質を求めることは無理で、価格訴求となるため羽毛の品質が下がります。この方法を取った宿命のようなものです。
大量に作れば安くなるのかといえば、高品質品はそうでもありません。
年間2000枚程度分しか得られない最高級アイダーダウンを500枚作ろうとしたら、まず、原料の調達ができません。かき集めたとしても一定の品質は期待ができず、その一方で需要が集中して、値段が跳ね上がります。
現在(2025.2)アイダ―ダウンの羽毛の価格が、どの原料メーカーも「時価」となっているのは、供給不足で価格が跳ね上がってしまっているからです。(2022→2024でアイダ―ダウンは50%価格が上がっています)
4:側生地のグレードを下げる
比較的に高品質を謳うメーカーに多い方法です。側生地も綿100%にしています。
一例はマザーグースを使った羽毛布団の側生地に60番手サテンを使う例でしょう。マザーグースの正当性については別にして、430dp~440dp表示のハイクラス羽毛布団には通常60番手サテンは使うべきでないと考えます。布団としてのバランスが良くないのです。
60番手サテンは生地重量が136g/㎡、一方私どものベーシック生地80番手平織バティスト生地は94g/㎡と30%も軽量です。マザーグースクラスであれば、少なくとも80番手レベルを使わないとバランスが取れないと考えます。
推測ですが、60番手サテンを使う理由は、中国で側を調達できるからではないかと考えています。80番手、100番手と細番手になればなるほど生地価格が上がります。