日本の梅雨はじとじとと湿気が高い。リネン麻は吸湿と発散性に優れているから、さらっとした触感で夏快適に使える素材だ。日本の伝統的な麻はラミー(苧麻)と呼ばれるが、リネン(亜麻)はヨーロッパの麻である。
素材を現場で確認することが大切だ、ということから、6月の中旬リネンの畑を求めてフランス・ノルマンディー地方を訪れた。リネンの原料になる草をフラックスと呼ぶ。3月に種まきをしたフラックスは6月には80㎝ほどに生育し中旬に小さなブルーの花を咲かせる。リネン畑を訪れるのなら、この開花に合わせてということになるのだが、毎年の天候によってずれることが多く、訪れても花を見ることができないこともあるという。
パリから北西へ約200㌔、ジヴェルニーでモネの庭園に立ち寄り、ノルマンディーへ。途中延々とつづく広大な畑は、フランスが大農業国であることを実感させるのである。
そんな私たちの目の前に一面に広がったのが、リネンの花であった。早朝に開花して1日ぐらいしか持たないというその花は、ノルマンディーの風にそよいでいる。花が小さいので、昆虫ではなく風が受粉の役割をするという。実を付けたフラックスは9月に収穫され、精製されて紡績工場へと送られる。これがフレンチリネンと呼ばえるものだ。
フラックスはスカッチングなどの工程で繊維だけが取り出されるが、品質によって10ランクぐらいに別れるのだそうだ。良いリネンを作るには、良い素材からというのは、あらゆる天然繊維に共通の真理といえるだろう。
まもなく仕上がってくるオリジナルの60リネン生地は、この上質なフレンチリネンを原料としている。その心地よさを多くの方に羽織っていただきたいと思うのである。
ねむりはかせ 沢田昌宏