テレビや新聞で広告されている低反発マットレスを買ってみたところ、蒸れて寝苦しいのですが?
日本にテンピュールが紹介されて30年ほど経ちます。NASAの宇宙開発の中で、おそらく宇宙飛行士の身体にかかるGを軽減するために開発されたヴィスコエラスティック・フォーム、一般的には低反発マットレスと呼ばれますが、体圧分散性が良いので話題になりました。メモリーフォームと呼ばれるぐらい、身体の形に変形して密着度が高いものです。
この素材を使ったマットレスやオーバーレイマットレス(従前のマットレスや敷ふとんの上に敷く薄型マットレス)は、確かに体圧分散性に優れています。
ところが、敷寝具に要求される機能は体圧分散性だけではありません。大きく6つの要素が必要です。低反発ウレタンにはさまざまな問題があるのです。
マットレスの上にシーツだけで寝ていませんか?
低反発ウレタンに限らず、高反発ウレタン、網状立方体など快適に眠れると喧伝されているマットレスは、ほとんどその上にシーツだけで眠るように推奨されています。しかし、睡眠生理上、この方法には大きな問題があります。
快適な寝床内は温度33℃湿度50% 快眠には湿気の調整が最も重要になります
ところが、低反発ウレタンは通気性があまり良いとはいえません。しかも身体に密着するので汗が逃げるところがないのです。
睡眠時には1日200~600ccもの発汗があります。その汗は多くが敷に吸収されますから、敷寝具の吸湿発散性が悪いと、寝具が体温に近づくにつれ湿度がアップして不快指数が上昇します。つまり蒸れて寝苦しいことになります。
オープンセルだから通気性が良いなどと喧伝されていますが、実際に低反発ウレタンはとっても蒸れて不快になりやすいのです。これは枕もマットレスも同じです。
汗を素早く吸って、放出するベッドパッドの使用が不可欠
このことから、快適な温湿度を保つためには、吸湿発散性に優れたベッドパッドが欠かせません。巷に多く販売されている、いわゆる汗とりパッドは中わたがポリエステルなので吸湿性はありません。タオル素材程度のシーツはもちろんのこと、吸湿性が良いとされるパシーマなどの脱脂綿の敷パッドでも吸湿性は不十分です。
そうでなくても汗を直接マットレスに吸わしてしまうというのは、衛生面からみても決しておすすめできることではありません。
ベッドパッドには、湿度調節が最も得意な羊毛(ウール)を使うのがベスト
羊毛は綿以上の吸湿性がある一方で、放湿性は綿の7倍と云われています。
つまり、乾きやすいので湿度を調節して快適に眠るには最も適した素材といえます。
ポリエステル素材など合成繊維系では吸湿力がほとんどありませんので、全く用をなさないのは図からも明快でしょう。
私たちが選んだのはドイツ・ビラベック社の羊毛ベッドパッド・敷ふとん
日本の羊毛ふとんの多くが、クロイ加工など羊毛の表皮にあるスケールを溶かしてウォッシャブル対応にしています。あるいは、スチームドライ加工などで樹脂加工を行いますが、これらは羊毛繊維の呼吸を妨げます。世界で最初に羊毛ふとんを作ったドイツ・ビラベック社の羊毛ベッドパッド、羊毛敷ふとんは、羊毛の良さを最大限に活かしてくれます。
下図のように入眠後最も発汗の多い30~60分において、スケールを取り除いた加工(この場合E-WOOL)は、未加工の本来のウールに比べて吸湿性や放出性が悪くなります。
さらに眠りのプロショップSawadaでは、片面をリネン麻にしたオリジナル仕様をおすすめしています。リネン麻は吸湿発散性が良く、熱伝導性も良いので、さらっとして熱のこもりを押さえる働きがあります。
おまけ:低反発ウレタンが抱える欠点とは。
基本的には買ってはいけないリストの上位。
まず、敷寝具選びの基本を学んで見ましょう
これから述べる理由で眠りのプロショップSawadaでは低反発ウレタンを使ったマットレスや枕はおすすめしていません。
蒸れる・姿勢保持が難しい・寝返りが打ちにくい
蒸れる
基本的にヴィスコエラスティック・フォーム(低反発ウレタン)は通気性があまり良くありません。しかも身体に密着するので、身体から発散される汗がこもってしまい、蒸れが生じます。
姿勢保持が難しい
圧力をかけるとその部分がへこみます。つまり重い部分(腰)が沈み込んで、正しい姿勢が得られません。
寝返りが打ちにくい
メモリーフォームといわれるぐらい、身体の型をとるように変形します。また温度が高いと柔らかく(=身体が当たっている部分は柔らかい)、低いと硬くなる性質がありますので、寝返りがしにくい欠点があります。
へたりやすい
これも素材上変形が大きいのでやむを得ませんが、高反発系のウレタンに比べるとへたりが早いのも問題です。