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なぜダウナ羽毛布団は羽毛が片寄るのか?最適な羽毛量を考察してみた。

目次

ダウナ羽毛布団で羽毛が片寄るんだけど・・・からのおはなし

もともとの話は大塚家具のダウナ羽毛掛布団がマス目で羽毛が片寄りやすい傾向にあり、特に羽毛がへたってくると顕著になるというトラブルからです。そもそもの原因はは、立体キルトのマチ高が11㎝あるためです。

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ダウナ羽毛布団のシングルサイズは150×210㎝で4×5マス、20マス仕上げです。立体キルトなので、表生地と裏生地の縫い目の間にはマチと呼ばれる布があります。

4×5マス立体キルト 7cmマチの断面図

これはシングルサイズ4×5マス羽毛布団の幅の断面図で、マチ高が7cmのモデルです。表生地と裏生地を縦方向につなぐ生地が「マチ」で、通常は軽量で通気性の良いメッシュ生地が使われます。この縫製構造によって羽毛布団のマス目は立体キルトといわれる箱形の構造になります。

かつて(40年以上前)は、マチが無い直縫いという縫製方法が主流でした。そうすると縫い目の部分が薄くなり保温性が落ちるため、立体縫製によって保温力を高めようというものです。今日では肌布団以外は、ほとんどがこの立体キルト加工になっています。

上図ではマチは7cmでしたが、ダウナ羽毛布団の場合はこのマチ高が11cmもあります。こんな感じですね。単純計算で1.57倍ふっくらします。

4×5マス立体キルト ダウナ羽毛布団の11cmマチの断面図

どれぐらいの保温力を求めるかによって、マチ高は変わる

このマチ高はいろいろありますが、2~11cmぐらい、通常は5~7cmぐらいが一般的です。一方2~4cmは肌掛けであったり、合掛けのような比較的に薄手の掛けふとんに用いられます。

ダウナ羽毛布団に見られる10cm以上のマチは、保温性を上げるため+売場でのふっくらしたボリューム感を狙って採用されることが多いようです。

実際に快適に使うことを考えますと、マチ高と充填する羽毛の量のバランスが大切になります。

マチ高が高いのに羽毛が少ないと、羽毛が片寄りやすくなります

一方、マチ高が低いのに、多い羽毛を入れると、膨らみすぎてしまい、身体へのフィット性が損なわれます(下図)。

羽毛の量を多く入れすぎてしまい、フィット性が損なわれた羽毛布団

もちろん、マチ高だけでなく、一マスの大きさも影響してきます。4×5マスと5×6マスでは一マスの大きさが1.5倍違います。マス目が大きいと中央部のふくらみがでるので見かけの嵩が増えるので、多めの羽毛量が必要となります。

マスの体積と、羽毛の嵩高との体積比を比べてみると、ダウナは羽毛の量が全く足らない

当社の場合とダウナ羽毛布団を比べてみましょう。羽毛布団は側サイズが155×220cmで、中央部が膨らむことで150×210cmの仕上げサイズになります。それを計算にいれて立方体から上下に合わせて8%嵩が膨らむとして計算してみます。外側ではなく、内側のマスでの理論値です。

ダウナ羽毛掛ふとん シングル 4×5マス マチ11cmの場合の体積比

20マスなので1マスあたりの体積は横37.5cm×縦52.5cm×11cm×1.08倍=約23,389立方センチメートル(cc)です。

ダウナ羽毛布団は現在は960g入りです。マザーグースなのでダウンパワー(嵩高)を440dp(440立方センチメートル/1g)としますと、一マスあたりの充填量は均等にすると960g÷20=48gです。48g×440dp=21,120立方センチメートルの嵩分しかありませんので、体積比は0.9倍で元からが足りません

以前のダウナ羽毛布団は1050g入りでしたので、今よりましでした。この場合は1マス52.5g×440dp=23,100立方センチメートルになりますから、体積比が0.99倍となり、これでぎりぎりです。

実際にダウナ羽毛布団でふっくらさせようと思うと、最低1300g(この場合で体積比1.22倍)は要ることになります。しかしこれでは都市部では厚すぎて使いにくくなります。

当店オリジナル羽毛掛ふとんSB100 シングル 5×6マス マチ7cmの場合

SB100は生地重量がダウナと同じ85g/㎡なので比較がしやすいのです。

この場合30マスになり、1マスあたりの体積は幅30cm×35cm×7cm×1.08倍=7,938立方センチメートルです。440dpの羽毛を800g入れますので、800÷30マス=26.7g 26.7g×440=11,748立方センチメートルですから、体積比は1.48倍となり、マスの空間より1.5倍ぐらいの羽毛を入れることになります。実際にはこれぐらいの羽毛量がベストです。

ダウナは羽毛がヘタってくると、片寄りがひどくなるのは当たり前

比べてみるとはっきりします。ダウナはマス目の体積に対して羽毛の量が足らないか、ぎりぎりしか入っていません。リフォームで持ち込まれるダウナは、側生地が通気性が良いためにへたっていることが多く、羽毛の片寄りが大きくなるのも当然なのです。

もしマチ高を7cmになっていれば、37.5×52.5×7×1.08=14,884立方センチメートルなので、960g入りの場合でも1.4倍となり、バランスが良くなります。

マス目が大きくなると、膨らみも多めにでることを注意する

当店の普通厚の場合は変形5×5で7cmマチですが、全部を慣らして計算すると150×210×7×1.08=238,140立方センチメートルに対し、440dpの羽毛を950g入れます。440×950=418,000で体積比は1.75になります。

4×5マスや変形5×5マスなど、一マスあたりの面積が大きい羽毛布団はマスのふくらみが大きくなります。上の計算では1.08倍としましたが、4×5マスだと1.2倍ぐらいで計算した方が妥当かと思います。1.2倍で計算すると264600立方センチメートルなので体積比1.58倍とバランスが良くなります。

生地が重くなると、必要な羽毛の量も増える

実際には、生地が重くなると、生地の重量が膨らみを抑えるので、必要な羽毛の充填量が増えます。

例えば、100番手平織りSB100の85g/㎡に対し、80番手サテンのWS8800生地は114g/㎡あり、35%も生地が重くなります。60番手サテンだと136g/㎡なので60%も増えます。

経験的には100番手平織り生地に440dpの羽毛800g入りの羽毛布団は、60番手サテンにした場合10~15%ぐらい多めに羽毛を入れる必要があります。

襟元は羽毛が痩せやすいので多めに、両端は少なめに入れる

当店では羽毛布団を肌掛け以外は手作りをしますが、マス目に均等に入れているわけではありません。

左図は5×6マスキルトで800g入りで作る場合充填表です。

襟元は汚れやすくて羽毛が痩せやすいため、多めに入れます。体の中央部にあたる部分も同じです。一方、ほぼ使われない両端は少なめの羽毛にしています。

マス目の位置によって1.5倍もの充填量の差がありますが、実際にご使用いただくと、それでも襟元は痩せてしまいやすくなるのです。羽毛のやせを防ぐためにも、定期的な丸洗いとリフォームはかかせません。

ダウナ羽毛布団をリフォームするには

ダウナはリフォームして、キルティングを正常なものにすることで、偏りが出ずに使いやすくなります。

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おまけ:体積比から考える、ベストの羽毛の量は?

いままでの考察から、中厚で体積比1.5倍、普通厚で1.6~1.7倍ぐらいがベストのようです。

合掛け布団 5×6マス 4cmマチの場合は?

5×6マスなので30cm×35cm×4cm×1.08=4,536立方センチメートルです。体積比1.5倍とすると6,804立方センチメートルとなり、440dpの羽毛の場合は15.46g×30=464gとなります。450~500gぐらいがベストでしょう。

普通厚掛布団 5×6マス 11cmマチの場合は?

フィット性の良い普通厚掛布団をということで、5×6マスでダウナと同じ11cmマチの羽毛布団側を作っています。このケースは30cm×35cm×11cm×1.08=12,474立方センチメートルです。こちらも体積比1.5倍とすると18,711立方センチメートルとなり、440dpの羽毛の場合は42.525×30=1,275gとなりますが、経験的には1,200gぐらいで十分かと思います。

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