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ドイツでベッドのシングルサイズの巾は90cm!?

ずいぶん以前のことですが、オーストリアのRelax社と始めて取引をしたときのこと。サンプルを送ってもらうのに、安直にシングルサイズ・・・と伝えたら90cm巾のマットレスが送ってきて慌てたことがあります。そう、ヨーロッパのベッドシングルサイズの巾は90cmがスタンダードなのです。

上の画像はRELAX2000ウッドスプリングのシングルサイズ90×200cmです。円板は横が5つですが、これが日本へ輸入している100×200cmだと円板は6つになります。

目次

大柄なゲルマン人がなぜ90cm巾?

日本のシングルサイズは約100cmが標準です。(ベッドのマットレスなどは96~97cmがほとんどで、敷布団は100cmが一般的) 体格からいうと日本人よりずいぶん大柄なゲルマン系民族にしては、シングルの巾が小さいように思われます。なぜでしょうか?

実際にRELAXなどドイツ系のベッドサイズを見ると 80cm、90cm、100cmがラインアップにあり、実は価格はほぼ同じです。ダブルはその倍 160cm、180cm、200cmになります。

一方日本ではシングルサイズが100cm、セミダブル120cm、ダブルサイズ140cmが一般で、その上のサイズは152cmだったり154cmだったり、メーカーによって違い、サイズの呼び名もバラバラです。日本のベッドはアメリカのベッドサイズの影響を受けているようです。

ベッドサイズ Wikipedia 英語

1フィートと1尺の不思議な関係

90cmが何に基づくかというと、フィートヤードというメートル法とは違った、しかし古くから使われている単位に起因するとおもわれます。1フィートは30.48cm3フィートで1ヤード(91.44cm)という単位が長く使われてきました。フィートはフット(足)に語源を持ちます。実際の足の長さではなく、靴の長さを1単位としたのだそうです。

そう、この3フィート(36インチ=1ヤード)がベッドの巾になったと云われています。

さて、日本も昔からある尺貫法では一尺=30.3cmで、ほぼ1フィートと一致します。尺は中国の殷の時代からあり、隋の時代に現代に近い長さに定められたといわれていて、そのため東アジアで一般的につかわる単位です。

両方とも身体の大きさから来ている単位なので、西と東で体格も違うのにほぼ同じ長さというのは興味深いですね。

平安時代や鎌倉時代では、床板の上に畳を敷いて、その上に寝ていました。つまり畳は敷布団の元祖と考えられなくもありません。畳の大きさはいろいろありますが、概ね3尺×6尺と考えられます。つまり、日本も3尺=約90cmが敷布団の原点だったのでしょう。

日本のシングルサイズが100cmである理由の考察

なぜ日本のシングルが100cmなのか、これはアメリカの影響もあるかもしれませんが、日本独特の鯨尺(約37.8cm)に由来するものと思われます。

今から30年ぐらい前まで、日本では婚礼布団というのがありました。下の画像のように緞子や綸子の小巾(=鯨尺)の生地を繋げて側生地に仕立てていました。

一般的な敷布団は小巾を3枚繋げたので三巾、あるい三布(みの)と呼ばれました。三巾分の生地から縫いしろ分を抜くと、側生地は103~105cmほどに仕上がります。小巾生地の長さは7丈(27m 掛2枚・敷1枚分)もしくは10丈(40m掛2枚・敷2枚分)でしたので、敷布団は105×200cmの側生地に仕上がります。これに綿をいれると、実際の巾は100cmほどになるのです。これが日本のシングルサイズの原点で、今でもシングルサイズ用の敷布団カバーの巾が105cmなのはここに由来するのです。

緞子でない一般使いの綿サテン生地は、最初から生地巾が105cmで仕上がっていて、三巾サテンとして流通しました。側縫いすると103cm巾ほどです。

セミダブルの原点は三布四布

ちなみに、関西式と呼ばれる仕上げは三巾の生地に四巾分の裏地を付けて、三巾半(三布四布みのよの)と云われました。この巾が約122cmで、セミダブルの原点と思われます。関西式では敷布団に使う小巾の生地量が少なくて済むため、7丈の生地で掛2枚、敷2枚仕立てることができました。

ダブルは四巾

小巾を四巾分にすると136~140cmになります。これがダブルサイズです。昔のダブルサイズの敷布団カバーは136×200cmが一般的でした。さすがにこれでは巾が狭いので、現状は145cm巾となっています。

蛇足ながら シングルの掛布団は四巾半(四布五布) ダブルは五巾(四布六布)

さて、表地となる緞子や綸子の生地は鯨尺約38cm巾を単位とするのに対し、白の裏地はヤード91cm巾がなぜか基本でした。ただシングルは表地が四巾、裏地が五巾で 155cm巾の側サイズになっていて、これが日本のシングルサイズの巾の原点です。私が初めて寝具問屋へ勉強で就職したとき、最初はカバー課への配属でしたが、かつてはシングルサイズを四布半(よのはん)あるいは四布五布(よのいつの)と呼んでいました。

ダブルは五巾(いつの)あるいは四布六布(よのむの)で175cm巾でした。今のサイズ190cm巾でも二人だと布団の取り合いになることが多いのですが、昔のダブルはずいぶんと狭いですね。羽毛布団も1985年ぐらいまでは、ダブルサイズは180cm巾でした。

ちなみにドイツの掛ふとんサイズは135×200cmが標準で、155×200cm、155×220cmが一般に流通しているサイズです。135cmは1ヤードの1.5倍なんですが、奇しくも、かつての日本のダブルサイズの敷と同じです。

フィンランドの掛布団のカバーは150×210cmと日本と同じでした。

蛇足の蛇足 側サイズ表示と実サイズ表示

さらにおまけですが、昔は側サイズ表示と実サイズ表示がなされていました。例えば羽毛布団の場合側サイズ155×220cm、仕上がりサイズ150×210cm というようにです。その一方でそれぞれの店で手づくりされていた木綿わた入りの布団は、側サイズだけの表示でした。ですから153×200cmの木綿わた布団といっても、実際は148×190cmぐらいしか仕上がりサイズがなかったのです。

今日では仕上がりサイズのみの表示となっています。

 

 

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