睡眠の状態が判ることと、睡眠を改善することは別物です
睡眠の状態を測る計測器が増えてきました。中にはスマホのアプリだけで睡眠状況を推定するようなものまであります。
しかしながら、睡眠を計測することが、そのまま睡眠を改善することにはつながりません。そのギャップをどのように埋めるかが大きな課題なのです。
終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)
睡眠の状態を計測するには、一般的に終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)検査を行うのが医療の現場では一般的とされています。特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の判定に使われることが多く、かくいう私(ねむりはかせ)も、SAS検査のために滋賀医大のサテライト病院でこの検査を受けました。下がその時の画像です。
このように身体のあちこちにセンサーを付けるために、なかなか気持ちよく眠れるというものではありません。実際にこの検査を受けたときには、3時間ほどで中途で覚醒をしてトイレに行き、それから4時間ほど眠りました。
主観である熟睡感と、客観的な実際の睡眠の質は必ずしも一致しない
この時の体験は、非常に役に立っています。というのも中途覚醒をするまでの睡眠は「よく眠れた」と自分では思っていました。一方、トイレへ行ってからは、再度睡眠をとろうとするのですが、なかなか寝付くことができません。うつらうつらしている状況で朝を迎えたので「よく眠れなかった」という感じでした。
ところが、後で睡眠の状態を教えていただいたところ、「よく眠れた」はずの前半の睡眠はノンレム睡眠がステージ1~2がほとんどで深睡眠はほとんど見られませんでした。一方、「寝られなかった」後半4時間の睡眠は、最初の1時間ほどは悪い状態が続いたものの、後半には深睡眠が多く出ていて、客観的には悪くない睡眠が取れていました。
つまり、良かったと思った前半は、さして良くもなく、悪いと思った後半は、そこそこ眠れていたのです。これは、前半の睡眠が悪いために、身体がバランスを取ろうとしたのかもしれません。
ただ、眠りのリズムからいうと、さいしょの3時間で深睡眠を取ることが重要ですから、この時の睡眠は「悪かった」というべきでしょう。
「よく眠れた」でも睡眠の質が悪い場合や、「眠れなかった」けど睡眠の質は確保できている場合がある
このような例からもわかるように、睡眠の質は確保できていたとしても、実際「眠れなかった」と思う人がいるのですが、結局「眠れなかった」という、精神的なストレスを抱えることになります。睡眠の質を改善するということは、主観的にも客観的にも両方で良くしていかなければならないのです。
逆に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合、睡眠の質は悪いにもかかわらず、「睡眠?ちゃんと寝られてますよ」という自覚症状がない方も多いのです。実際、私もそうでした。
PSG検査を毎日行う訳にはいかない
睡眠の質を計測する最も正確な方法といわれるPSGですが、実際に毎日行うにはハードルが高すぎます。センサーの取り付け、取り外しだけでも相当なストレスですし、検査代も保険適用で2万数千円ほどしたと記憶しています。普段と同じように眠る・・・なんてわけにはいきません。
そんな状況でしたが、ここ10年ぐらいで睡眠の状態をモニタするさまざまな機器が生まれてきました。
アクティグラフ(睡眠活動計)
腕時計のような形をしたもので、中に加速度センサーがあって、身体の動きを常時図ることにより、睡眠しているか覚醒しているかを調べる計測器で、PSGのように大げさでなく毎日の活動量を測れるために、睡眠日誌的に使われて分析が行われます。ただ、脳波を実際に測るわけではないので、正確な睡眠状態を判断することはできません。睡眠時無呼吸症候群などのスクリーニングに使われます。
昨今ではスマートウォッチに疑似的に心拍、血圧、中には血中酸素濃度を測ることができる機能が付いたものがあり、体動を含めて睡眠の状況を計測することができるようになっています。安いものだと5千円ぐらいでもあるので、非常に便利になってきました。
初期に出た市販の睡眠活動計の中には、体動を画像でモニタして、音をとることで呼吸やいびきの状態を見るなどといったものもあったのです。
睡眠計測器
これは敷寝具に敷くことによって、体動や心拍、呼吸から睡眠状態を推計することができる非接触型の睡眠計測器です。私の記憶にある限りでは最初に秋田大学で開発がなされていたように思います。
これを最初に製品として世に出したのはタニタの睡眠計スリープスキャンで(たぶん)最初のモデルは35,000円とそれまでのものに比べて、非常に安価でした。SDメモリカードでログデータをPC上に移す必要はあったが、画期的でした。
最新のものだと、別メーカーからコンパクトになったものや、WIFIやBluetoothを使って簡単にデータを送ったり、スマホで管理できるようになっているものがあります。
パラマウントベッドなども、これと同様の機器を使って睡眠分析サービスを行っていました。