テレビで毛布は布団の上に掛けるといわれたが
しばしばテレビ番組で毛布は布団の上に掛けるものだと紹介されています。つまり上の画像のように布団の上に掛けるということになります。
しかし、かつては毛布は布団の内側に掛けるものでした。つまりこのような感じです。
なぜ「上に掛ける」となってしまったのか
確かな説はありませんが、おそらく羽毛布団が登場してからだと思います。今から30年ほど前、掛ふとんの主流は木綿わたでした。それに保温性を上げるためにアクリルの2枚合わせの毛布を組み合わせて使うのが主流でした。アクリル2枚合わせの毛布(カールマイヤー毛布といいます)は重量が2.4~3.0kgにもなり、かなり重いものです。
羽毛布団が急速に普及したのは1980年代後半から1990年前半にかけてです。この時に、羽毛布団の良さを活かすためには、羽毛布団は直接肌に使うことが良いと推奨され、アクリルのような合成繊維の毛布は上に掛けて使うように説明されました。
おそらく、今日毛布を上に掛けるという考え方は、ここから派生しているのだと思われます。
羽毛布団とアクリル毛布なら上に掛けるべきだが・・・
羽毛は呼吸していますので、身体に直接使った方がその温湿度の調整能力は最大に活かされます。アクリルやポリエステルなどの合成繊維の毛布を下に使うと、その良さが活きてきません。
また、アクリル毛布を上に使うというのは、当時羽毛が軽いために「重くないと寝られない」という木綿布団に慣れたお客様が少なくなく、羽毛を押さえるためにも有効でした。
重いアクリル毛布を載せると、羽毛の保温力は低下する
ところが、重い毛布を載せると羽毛布団は潰れてしまいます。重量で身体へのフィット性は向上しますが、保温力の源である嵩は減ってしまいます。結局、毛布の保温力で相殺されるわけですが、本末転倒ですね。
重いアクリル毛布(特に2枚合わせ)は今日の新しい住環境に全くあっていません。昔からの保温性が低い住環境以外では止めるべきです。
上から掛けるのであれば、肌ふとんかキルトを
保温性、基本的にはまず敷で確保するのが快適な睡眠環境づくりのルールです。その上で羽毛布団1枚で保温性が足らない場合は、羽毛布団を押し潰すような重い毛布ではなく、軽い肌ふとんやキルトなどを羽毛布団の上に掛けてください。フリースのような軽量毛布であれば、上でもかまいません。
天然素材の軽量毛布を布団の下に使うのが基本
単純に暖かければ良いというわけではない
快適な寝床内温湿度33℃50%をキープするためには、吸放質性の良い天然素材の毛布が一番
今日住宅環境は、高気密・高断熱とかつての日本家屋とは様変わりしています。かつてのように絶対的な保温力が求められるのではなく、快適な寝床内温湿度(33℃50%)をいかにキープするかが課題になってきました。温度コントロールだけでなく、どちらかというと湿度コントロールの方が重要になってきているのです。
アクリル・ポリエステル繊維などの毛布はおすすめしない
ポリエステル、アクリルなどの毛布は基本的に汗を吸うのが苦手です。寝具が暖まって33℃になったときに、湿度が高くなって蒸れやすくなります。基礎代謝量の低い寒がりの方ならともかく、一般的な体質の場合避けた方がいいでしょう。
発熱繊維などの特殊な毛布はどうかというと
通販などで汗を吸って発熱する繊維を使った毛布が紹介されていますが、どうでしょうか?
シアンアクリレート系繊維は汗を吸って発熱する機能(ブレスサーモなどの商標がそうです)があります。といっても、元々ウールやカシミヤは吸着熱、つまり水分を吸って発熱する素材ですから、この機能自体は、それほど驚くものでもありません。問題は、発熱繊維ではなく、その周りの素材が、湿度を調節するような構造になっているかどうかでしょう。例えば、アルミ繊維は確かに熱を逃がしませんが・・・・湿気も逃がしません。
天然素材でも綿100%の毛布は暖まりにくい、ウールやカシミヤなどの獣毛系がベスト
綿毛布は吸湿性は良いのですが、干さないと乾きにくいため、湿気を吸ったままでは暖まるのが遅いという欠点があります。綿毛布の場合はこまめに干すことが大切です。
吸放質性が良いのはウール、キャメル、カシミヤ、アルパカ、ビキューナなどの獣毛系です。即温性も優れているのでおすすめです。シルクも悪くはありません、肌にはいちばんやさしいですが、獣毛系に比べると即温性は劣ります。
身体に隙間を作らないことが保温の基礎
ウールやカシミヤの薄手の毛布を肌に密着させて使うこと
そもそも保温とは、身体の熱を逃がさない、ということです。逃がさないためには、断熱性の良い素材=空気が多くあればいいので、嵩がある布団は暖かいということになりますが、嵩があれば(=ふっくらしていれば)いいのかというと、身体へフィット性が悪く、隙間ができるようでは、いくら布団そのものの保温性があっても、身体の周りの隙間から暖まった空気が逃げてしまいます。
このことから、重い毛布を上から押さえて、身体と密着させるという話は一理ありますが、掛ふとんは軽いほど体へのストレスが少なくなります。下記に述べる接触温感からしても、ウールやカシミヤなどで比較的薄い毛布を身体に巻き付けるように密着させることにより、身体の周りの空気を逃がさないようにして、それから掛布団をかけるようにすることをお勧めします。
ウールには下でご紹介するように、毛刈りタイプでなく、ボアタイプのものがあります。身体の表面の温度を逃がさないので、保温性は高まります。
毛布を使う意味は、その接触温感にある 直に使うべし
毛布が暖かく感じられるのは、表面が起毛やボアになっていて接触温感が高いためです。毛足があることで、暖まった空気を逃さないようにします。ですから、上に掛けていては毛布本来の暖かさを得ることができません。
眠りのためのおすすめ毛布は?
一口に毛布といっても、いろいろな素材が
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この中でおすすめするのであれば、人類が古代から使い続けてきた素材、ウールです。ウールは汗を吸って発熱をする機能があり、温湿度をほどよく調整してくれます。同じ動物性自然素材として羽毛布団に合った素材です。さらに、カシミヤなどの獣毛はウール以上に保温性や吸放湿性に優れています。
ドイツから輸入しているIBENAなどの綿・アクリル混は綿の吸湿性とアクリルの保温性を持ちながら軽い毛布です。ウールの良さには及びませんが、価格もリーズナブルでおすすめです。
ヒトは動物であるという視点から、眠りのプロショップSawadaではアクリル100%やポリエステル100%の毛布は推奨しておりません。
軽いカシミヤの毛布を内側に使うのが極上
羽毛布団に最適な毛布ということであれば、カシミヤ毛布がベストでしょう。その中でも、イタリア・マラゾット社のカシミヤ毛布は非常にグレードの高いカシミヤを使い、非常に軽いのです。国産の上質のカシミヤ毛布の重量が1200~1300gなのに対し、マラゾット社のカシミヤ毛布は1000g前後、2016年の新製品ZEUSに至っては635gと非常に軽く、風合いも抜群です。お手頃なカシミヤ・ラムウール混やカシミヤ・アルパカ混もあります。
実際、店主はマラゾットのGEISHA1060gを6~7年使っていますが、保温力と、なによりその気持ちの良い使用感は極上の寝心地をもたらしてくれます。
寒がりの方はウールボア毛布を
それでもまだ寒がりで、という方は前述のように、羽毛布団の上に軽い肌ふとんを使うのがおすすめです。カシミヤまでは、という方にはウールボアの毛布がおすすめです。一般の毛刈りした純毛毛布と違い毛足が長いので、暖かさを実感することができます。