Q:ダウンプルーフ加工をかけない羽毛布団の方が良いんですか?

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樹脂によるダウンプルーフ加工をかけない羽毛布団が良いと聞きました。なぜでしょう?

基本的には正しいです。通常羽毛布団の生地には、羽毛の吹き出しを押さえるためにダウンプルーフという吹き止め加工をしています。一般的には樹脂によって行うものが多いのですが、この加工を行うと

1.通気性が低下する

2.生地の吸湿性が低下する

2つの問題が起こります。まず、通気性が低下すると、空気の出入りが悪くなりますから、湿度の調整がしにくくなります。快適な温湿度は33℃50%といわれていますが、通気性が悪い生地は蒸れやすくなります。

一方、樹脂コーティングによるダウンプルーフ加工の生地に水滴を垂らすと、生地に吸い込まずに水滴のままになり、その後ゆっくりと吸われていきます。当然、吸湿性が落ちるわけですから、こちらも蒸れの原因となります。

何度となく、ポリエステルやポリエステル混の生地だと蒸れやすいとお話していますが、樹脂コーティングした羽毛用生地は、ポリエステル混の生地よりはましであるものの、羽毛の良さをスポイルしてしまうことには違いありません。

快適な睡眠を研究する快眠寝具研究室。羽毛布団を4,000枚以上手づくりしてきた羽毛のプロが語る、羽毛布団の真実。ポリエステル混の羽毛布団は蒸れやすく快適に眠ることができないという欠点・問題点を説明します

ダウンプルーフを掛けない生地だと快適になる!?

このようなことから、ダウンプルーフをかけずに高密度で織った「ノンダウンプルーフ」という生地が生まれました。ニューピスト、ビアンコーレなど、それぞれ特徴を活かした生地が作られています。

たしかに生地の吸湿性はアップする

これらは一般に樹脂コーティングを行っていないために、吸湿性が早いのが特徴的です。それゆえに、ノンダウンプルーフの生地が良いのだと思われてきました。

しかし洗濯すると通気度が低下する しかも重い

オビキスというノンダウンプルーフ生地(綿100%60サテン)の場合を例にします。

この生地は60番手の超長綿を200x185と375本の高密度の打込みで織られていて、生地重量は150g/㎡通気度は2ccです。一般的な60サテンの生地が360本で135g/㎡ぐらいなので、高密度な分重量が1割以上重くなります。通気度は初期状態は問題ないのですが、実はこの通気度洗えば洗うほど低下します。

一般的なダウンプルーフだと、洗濯するごとにダウンプルーフは落ちるので、例えば通気度が1.3ccであったものが、洗濯後は3.5ccになるなど通気性が高くなります。

一方ノンダウンプルーフの生地は通気度が2cc→1.7ccへと低下、つまり通気性が悪くなる傾向があります。どうも洗うことで生地が締まるのだそうです。

実際にこのオビキスの生地を使って側を作りましたが、正直生地が重くって、羽毛が生地に負けてしまい膨らみがなくなってしまいます。

不感蒸泄で放出される汗に有効なのは通気性の良さと軽さ

ヒトは一晩に200~600ccの汗をかくといわれますが、これは水滴のような水の状態ではなく水蒸気として体表面から失われる水分と通常の発汗と2種類あります。

この時に必要なのは、水蒸気の状態=気体を以下に早く透過させて、発散させるかということですから、表面の吸湿性も大切ですが通気性の方が重視されます。吸うことも大事だけど、それを発散させて寝床内の湿度を下げることが大切なのです。

また、生地が厚い(=重い)と生地が湿気を多く含んでしまいます。吸湿性の良い生地ではなおさらです。特に冬の場合は布団を干すことが少なく、冷たい寝室では結露もしやすいので、生地が湿気を持ちやすいのです。そのような状況で布団に入ると、布団に含まれる湿気を発散されるために身体の熱量が奪われてしまいます。脱線しますが、木綿わたの布団も同じような状況になるため、暖まりが悪くなるのです。

逆に言えば、綿100%の軽量生地の方が、生地が持つ湿気の量が少ないため、暖まり方が早くなります。その上で通気性が良いと空気の循環が良くなり、結果湿気の発散も早くなって、快適な寝心地が得られるようになるというわけです。例えば60サテンのノンダウンプルーフは150g/㎡の重量ですが、ドイツWeidmann社のTE270は69g/㎡と半分以下で、しかも通気度が6.0ccもあります。当然、軽量で通気性の良い生地ほど湿度調整がすばやくできます。(ちなみに、通気度が5ccを超える場合は、ステッキーダウンのようなホコリの少ないダウンでないと吹き出しやすいので、良い原料でなければなりません)

つまり、吸湿性一点のみで羽毛の性能云々を語ることはできないということです。

快適な睡眠環境を作るために、羽毛布団の側生地は軽くて通気性が良いものが最も適しています。ノンダウンプルーフの生地が優れていると一部で言われてきましたが、実際はそうではないことを睡眠環境工学の面から見て、羽毛布団の側生地の選び方について、具体的な水蒸気発散モデルから考察を行ないます。

結論:ノンダウンプルーフにこだわる必要はない

結局ノンダウンプルーフ生地には吸湿性などの利点もあるものの、通気性が落ちたり、なにより生地が重くなってしまうという欠点がわかりました。生地が重く汗を吸いやすいので、日干し乾燥をしっかり行わないと、羽毛布団に湿気が籠もりやすくなります。

ノンダウンプルーフだからといって、積極的なメリットはあまりなさそうに思われました。

通気度と軽さが羽毛布団の快適さを決める

快適な睡眠を研究する眠りのプロショップSawadaの快眠寝具研究室。快適な羽毛布団のためには軽量で通気性の高い綿100%の生地が必要です。ドイツWeidmann社など羽毛を最大に活かす軽量で通気性の良い羽毛布団用生地を説明します。

羽毛布団の快適さは、生地の「通気度」、「軽さ」が最終的にものをいいます。樹脂によるダウンプルーフをやらないという考え方は悪くないですが、それによって通気度や軽さが損なわれるのでは本末転倒といえるでしょう。

ですので、眠りのプロショップSawadaでは綿100%の平織りをおすすめしています。綿100%の平織り生地なら、通気性をぎりぎりまで上げても吹き出しがしにくく、縦横の打込み本数が同じような場合は洗濯に対しても織り組成が安定しています。(逆にサテン生地は糸を飛ばして織っているために安定性に難点があります) さらに、軽量にできるわけです。

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