アイリッシュリネン80生地 国産化プロジェクト

ハードマンズ・アイリッシュリネン80をもっと広幅化できないか

ハードマンズ社80リネン生地を使ったカバーは非常に軽量で風合い抜群です。ところが、元々の生機がアパレル用に63インチ巾で織られていて、仕上がり生地は130~135cm巾ぐらいにしか上がりません。シングルの掛ふとんカバーを作るには最低155cm以上の巾が必要なため、両側に接ぎが必要でした。当然カバーの重量も増え、縫製の安定感も得にくくなります。

しかも加工の関係で、白(晒)生地は国内仕上げで、生成のシャンブレー(経糸が晒し、緯糸が生成)は中国でエアータンブラー仕上げになっているために、色によって仕上がりの風合いが微妙に異なります。

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リネン80番手を国内で広幅75インチで織る

ちょうど白の生地が無くなったために、今後どうするか思案をしていました。ところが中国で製織するとロットが3000mとハンパではありません。とても一介の布団屋には重すぎます。しかし、このアイリッシュリネン80カバーは80番手で掛カバー2万円半ばという、60番手並の低価格で人気の品です。

リネン生地メーカーと打合せをしたら、「日本でならロットを抑えて織ることができるかもしれない」というところから、いろいろと当たっていただいた結果、75インチという従来にない広幅で製織してもらえるところを見つけていただきました。これなら、整理仕上げ後に158~160cmの巾を確保することができます。

ハードマンズ社の80リネン糸を使い、ロットは約1,100m。正直重いロットですが、日本にはどこにもない製品ということから取り組むことにしました。

生地のスペシャリスト 中村(株)さん

今回製織加工をお願いしたのは浜松にある中村(株)さん。なんと130番手の製織もできる(130番手の糸があるとは思いませんでしたが)有名アパレルなどの生地を手がけるスペシャリストです。実はこの前に100番手リネンの追加300mもお願いしたのですが、これもこの会社です。

このオリジナル生地が製織を開始したということで、今回は社員全員で浜松へ行き、中村さんと、実際に製織をしていただいる高田織布工場を訪れて、生地づくりの現場を見てきました。

経糸は晒し4918本、緯糸は生成

75インチというと、広幅の織機のなかでも特に広いタイプでないと織ることができません。経糸は4918本という気が遠くなる本数です。これを一本ずつ間違えなく織機の中を通して行かなければなりません。

生地を織るという作業は簡単なモノでは無く、まず経糸をちゃんと準備することから始まります。経糸の掛け替えだけで2日ほどかかってしまうのだそうです。

緯糸はリネンの生成り色(亜麻色)です。麻の場合糸の収縮があまりないので、切れやすいという短所があります。ですから麻生地を製織する場合は、スチームで湿度を上げておらなければなりません。綿と違い、麻は糸が製織中に切れるので、そのたびに機械がストップします。特に80番手以上の細番手、それも幅広の生地はやっかいなのだそうです。

経糸に晒し(白色)、緯糸に生成色(亜麻色)で織ることで、縦横生成色にはない、やさしい色の仕上げになります。

最近アパレルなんかでも綿麻が多いのは、緯糸に綿が使えるから製織の効率がいいのではないかと思ってしまいました。今回の生地の場合、1日に一反分である50mも織れないのだそうです。

製織後75インチ=190cmを仕上げると約160cmに

経糸は60℃で熔解する水溶性ビニロンをS・Zの二重巻で仕上がっています。これは経糸の方が織機の中で糸を上下させるために切れやすいのを防ぐためだそうです。ですから、織り上がった状態では、元の80リネンの風合いとはまったく非なる、硬い仕上げです。

C.C.などソフト加工は今回は行わない

これを、仕上げでは国内でも最高レベルの滋賀・能登川の大長さんで行い、最終的に160cm巾に仕上げます。通常では、リネンらしい柔らかい生地の風合いを出すために、C.C.加工というのを行います。C.C.とはクールクラッシャブルの意味で、生地をたたいて柔らかさを出す加工です。また、エアータンブラーという空気でたたいて柔らかくする方法もあります。

ただ、これらの加工は生地をたたく分、生地の強度を弱めることになります。アパレルなどでは、ふんわりと柔らかいリネンの雰囲気を出すためにC.C.加工やエアータンブラー加工をすることが多いのですが、今回はカバー・シーツ用です。何回か洗えば、C.C.加工やエアータンブラー加工と同じような柔らかさが得られますので、生地を傷めないためにもソフト加工をしておりません。そのため、仕上がりは若干硬く感じることがあります。また涼感も従来の80番手よりもアップしています。

工場を後にして思うこと

かつては多くの製織工場があった浜北も、最盛期の1/5ほどしか無いそうです。しかも多くの工場では、高齢化が進み廃業が増えて行きます。なにより、熟練した技術者が少なくなっているという現状は、東近江の麻工場も、長浜の縮緬も同じかもしれません。

ファストファッションに使われる生地は、海外で製造され海外で縫製されます。そんな中で品質の高い生地を織ることができる工場が徐々に減っているという厳しい現実も垣間見えます。日本の織物技術や織物文化というものを、ちゃんと継承していくことの大切さを改めて感じました。

カバーになって仕上がってきました

さて、リネンの生地はカバーにするのも加工がやっかいです。安心出来る技術の高い加工場にお願いして、ようやくリネンが仕上がってきました。

品名 サイズ 価格(税込)
掛け布団カバー シングル 150×210cm 32,400円
ボックスシーツ シングル 100×200×23cm 23,760円
ピロケース 封筒式  45×90cm 5,400円