しばしば羽毛布団には、メーカーによって異なりますが、パワーアップ加工、フレッシュアップ加工、バイオアップ加工などの表示がなされています。そこで謳われているのは「羽毛の本来の嵩をとりもどす」というような文言。ところが、同じメーカーの羽毛布団でも加工がなされていないものもあります。それも高級品ほど、カタログの上位バージョンになればなるほどパワーアップ加工がなされていない傾向にあります。
高級品には不要で、低級品に必要な加工なのでしょうか?どう違うのでしょうか?
そのヒミツは羽毛の輸入経路にある
羽毛布団に使われるグース(ガチョウ)やダック(アヒル)の羽毛はほぼ100%輸入品です。世界各国から輸出されますが、その中でもポーランドやハンガリーなどの産地は良質な産地とされています。
一方日本へ輸入される羽毛の80%は台湾、もしくは中国経由です。2016年5月に「羽毛布団の産地偽装が行われている」と新聞報道がありましたが、偽装の背景にはこのルートがあります。
一般に羽毛の単純に考えれば、同じ羽毛をポーランドから日本へ直接輸入するのと、台湾や中国経由で買う方が1クッション入る分高くなるはずです・・・ところが
日本へヨーロッパ産の羽毛が入ってくるルート
その1 ヨーロッパで洗浄された羽毛が輸入される
当社のスリープウェル・カウフマン社の羽毛がこれに当たります。オーストリア・ブレゲンツの最新工場で洗浄・除塵・分別された羽毛、それも最高級の羽毛ですので、羽毛を圧縮せずそのままの状態で輸入されます。輸送コストはかかりますが、羽毛を一切傷めません。
↑カウフマンから入荷した羽毛。これで5kg 一箱に10kg入り ゆったり入っている
その2 ヨーロッパから原毛を輸入、日本で洗浄・分別される
当社が河田フェザーから購入している羽毛がこのタイプです。現地で一次洗浄・分別された原毛は日本で本格的に洗浄・除塵・分別がされますので、羽毛は元に戻ります。羽毛は軽く圧縮されて当店まで入荷しますが、羽毛の本来の良さを損ねることはありません。
その3 圧縮された羽毛の状態で日本へ輸入される
低ランクの羽毛はこのタイプが多いのです。圧縮することにより輸送コストが下げられます。日本より中国の方が洗浄・分別コストが安いために、中国で洗浄されて圧縮して輸入され、これも中国で縫製された側に日本で詰めて「日本製」として販売されます。昨今の低価格の国産羽毛布団はこのタイプが非常に多いのです。結局中国で吹込みを行っているか、日本で行っているかの違いです。
下の画像はドイツのピーターコールの出荷風景です。上質な羽毛はここまで圧縮されることは少ないと聞いていますが、ボリュームゾーンの羽毛は推して知るべしです。
約500kgだから、上のカウフマンと比べると50倍ぐらいに圧縮していることになります。当然このような状態で入荷した羽毛は、そのままの状態では膨らまないのです。そこで、スチーム等をあてて羽毛を開かすことによって元の状態に近いところまで戻します。
このサイトに紹介されています
パワーアップ加工は、時間が経つと嵩が戻る
ダウンパワーが本来の数字なのかは疑問
パワーアップ加工等を行うことで、嵩が戻ります。ただ、時間が経つにつれ嵩は少しずつ減っていきます。加工したばかりの嵩がある羽毛を試験すれば、本来よりも良いダウンパワーの数字が出ることが予想されます。ダウンパワーの数字だよりにすると厄介なのは、このようなケースがあるからなのです。
結論:パワーアップ加工は、多くが圧縮して輸入される低ランクゾーンの羽毛に多い。国内洗浄の羽毛には本来不要な加工
その1には上の画像のようにヨーロッパで圧縮して日本へ届くものも少なからずあります。しかしながら、日本で洗浄している限りパワーアップ加工は不要ということになります。現状台湾・中国からの羽毛輸入量が8割ということは、パワーアップを必要とする羽毛が実に多いのだということの証明にもなるのです。