もし、羽毛布団の側生地がビニールだったら・・・
ビニールは基本的に空気を通しません。もし羽毛布団の生地をビニールで作ったら、羽毛は一切呼吸できませんから、羽毛が持つ温度や湿度を最適に調節するという機能は失われます。確かにホコリはでないでしょうが、どんな良い羽毛をいれても意味がないということです。
羽毛の良さを活かすには通気性が非常に重要なのです。
生地の通気性を表す通気度
生地の通気度は 2.0cc/sec/㎠ というように1㎠に一秒間に通過できる空気の量で表されます。上記のような試験器を使って測定します。
一度ためしてください
まず、普通の布団カバーの生地を両側を手で引っ張り、マスクのように口に当てて呼吸をしてみて下さい。高密度織りという特殊なカバー以外は、すんなり呼吸ができます。
次にお手持ちの羽毛布団の生地を同じように当てて呼吸してみて下さい。どうでしょうか?ほとんどの方は強く息を吸わないと呼吸できないか、ほとんど呼吸できないかのどちらかでしょう。
羽毛が吹き出さないようにするための加工
羽毛布団の生地は、羽毛が吹き出さないようにダウンプルーフという吹き止め防止加工をかけたり、あるいはダウンプルーフをかけない代わりに高密度で織られて作られています。
日本のふとん地流通協会が決める羽毛布団用織物品質基準では
平織・綾織 3.5cc以下 洗濯後 4.0cc以下
朱子織(サテン) 3.0cc以下 洗濯後 4.0cc以下
このような基準が定められています。
日本の羽毛布団用生地は 綿100%で2.0cc、ポリエステル混で1cc以下がほとんど
ところが、一般に流通している日本の羽毛布団用生地は綿100%の朱子織(サテン)で1.5cc以下、平織・綾織で2.0cc以下。ポリエステル混やポリエステル100%の生地になると1.0ccに満たないものがほとんどです。
2cc以下では、呼吸がほとんどできない
実際にいろいろな生地を試してみると、2cc以下の生地ではほとんど呼吸ができません。できたとしてもわずかです。1cc以下だとほぼ不可能な状況になります。
ところが、ヨーロッパから輸入しているWeidmannTE270の生地は通気度が6.0ccもありますので、難なく呼吸することができます。
通気度の低い生地では、羽毛の良さを活かせない+蒸れやすい
羽毛は呼吸をしながら、温度や湿度を調整します。これが自然のエアコンと呼ばれる所以ですが、生地の通気性が悪いと、そもそもその良さを活かすことができません。通気性の悪い布団は、湿気がこもりやすく、蒸れやすいのです。多湿な日本の気候には、合わない寝具になってしまうのです。
羽毛布団の歴史の浅い日本では、吹き出すことが厳禁だった。今も変わらない
ヨーロッパと日本の違いはなんでしょうか?ヨーロッパでは、永年羽毛は枕や寝具の中素材として使われてきました。昔は今のように高密度な生地が少なかったでしょうから、羽毛がふわふわ浮かぶのは、いわば当たり前の世界だったのでしょう。よく映画などでも羽根枕の中身をぶちまけるシーンが出てきます。(ピローファイトというそうです)
ところが日本の羽毛布団の歴史はまだまだ浅く、特に初期においては羽毛が生地から飛び出るということは即クレームにつながりましたから、とにかく羽毛を出さないということが重要視されました。また、ヨーロッパでは平織の生地が一般的でしたが、日本では平織だとガサガサ音がするために、ソフトな風合いのサテン生地が主流になりました。
サテンは洗濯後に組織が崩れやすいために、洗濯後通気度4.0cc以下にしようとすると、どうしても初期通気度が低くなります。平均的な超長綿60サテンの場合、通気度1.3cc、洗濯後3.7ccという状態でした。
一方ヨーロッパの生地は平織が多く通気性が良いのです
ウォッシャブル表示をしようとすると、ポリエステル混生地に、さらに通気度は低下する
一方、丸洗いできるということがセールスポイントになってきました。実際に家庭で丸洗いされているケースは極めて少ないのですが、洗えるというのは消費者にとっては魅力だったようです。
ところが、ウォッシャブルに対応するためには収縮率のことも満たす必要があり、結果的にポリエステル素材を使わざるをえなくなります。そうすると、通気度は0.7~0.9cc程度に下がります。洗えるけど蒸れるふとんになってしまったのです。
ポリエステル混生地は吹き出しやすく、汗を吸いにくい
ところが、ポリエステルやリヨセルなどの繊維は羽毛が吹き出しやすい欠点があります。その理由は繊維の断面が円に近いからです。繊維の表面がつるっと平滑なために、羽毛の中でもネックフェザーと呼ばれる、非常に細くてとんがった繊維が生地から吹き出しやすくなります。よくダウンウェアで羽毛が飛び出ていることがありますが、あのようになりやすいのです。
繊維断面図を見ると天然繊維である木綿は大きさや形が不定であるのに対し、合成繊維であるポリエステルは繊維の表面が平滑で真円にちかい断面図になります。これはリヨセルなどの再生セルロース繊維などでも同様です。そうすると、合成繊維のほうが羽毛が吹き出しやすくなるのです。
合成繊維の生地は強い吹き止め(ダウンプルーフ)加工が必要である
このため、ポリエステル混生地では、ダウンプルーフという羽毛の吹き止め加工を強く掛けないと吹き出しやすくなります。また、このタイプはウォッシャブル素材として使われることが多く、選択後の吹き出し防止を考えると、さらに強い吹き止め加工をする必要にせまられます。
通気性が悪いポリエステル混合繊維は蒸れやすい
丸洗いできるけど、蒸れるので本末転倒
一般に綿素材の通気度が1.3~1.7cc/s程度であるのに対し、ポリエステル混合繊維の生地は0.7~0.9cc/sとかなり通気性が落ちます。かなり通気性が悪いので、もし口にこの羽毛用繊維を当てると呼吸がほとんどできません。側生地そのものにも吸湿性がないので、ウォッシャブルだけど、通気性が悪く蒸れる羽毛布団になります。
眠りのプロショップSawadaの考え方
生地の通気性については、あまり語られてきませんでしたが、快適な睡眠環境を得るには非常に重要な要素となります。そこで、眠りのプロショップSawadaでは、快適な羽毛布団を作るために次のように考えました。
できる限り通気度の高い生地を選ぶ
ヨーロッパの生地は通気度に優れています。現在のラインアップ TE270は通気度が6.0cc、TE200は5.0ccと国産水準を大きく上回ります。
国産はオリジナル生地を作っています。通気度3.2ccと国産水準ぎりぎりに仕上げたSB100はオリジナルの生地(2.0cc)の1.6倍の通気度です。SB80は80番手の平織ですが、2.6ccで仕上げています。サテン生地になると、一度丸洗いした時の通気度変化が大きいので、1.4~1.7CCのものが多くなります。
ホコリの少ない高品質な羽毛原料を選ぶ
通気度を上げすぎると、今度は羽毛のゴミなどの吹き出しが目立ってきます。このバランスが難しいのです。通気度4ccを超える生地には、手選別のステッキーダウンのように、ホコリが少ない原料を選びます。それ以外でも、ロイヤルゴールドラベル(400ダウンパワー)を最低水準としているのです。