マットレスの性能の一つとして、体圧分散は必要
体圧分散とは、睡眠時に身体にできるだけ圧力を分散させて支えることのできる性能です。マットレスメーカーの説明には上図(これはマニフレックスの説明から)のように、均等に身体を支える図式がしばしば使われます。
なぜ体圧分散が必要なのか?
もともと木綿わたの布団で眠る日本人には、ふかふかのふとんは腰に悪い、硬く薄くなったせんべい布団の方が身体に良いといわれてきました。その理由は
柔らかい布団やマットレスに寝ると腰が落ち込んでしまい、腰痛などの原因になるためです。その為敷寝具は硬いのが良いとされてきました。
今なおかなり硬い敷布団をお使いの方は少なくありません。1980~1990年に固わたが非常に普及した背景にはこのような理由がありますが、硬めの薄い敷布団を畳や床の上でお使いの方は少なくありません。
硬いだけでは身体に負担がかかるので体圧分散を
ところが硬い布団で寝ると、身体の出っ張った部分に無理な力がかかります。加えて高齢化が進むにつれ、筋力は低下していくために身体を支えきれなくなる方が増えてきました。
上図のように、特に肩甲骨と臀部にかなりの荷重がかかることが判ります。横向き寝の場合はさらに肩の出っ張りに多くの力がかかります。
硬い敷寝具で寝たきりになると、44%の圧力がかかる臀部、仙骨に床ずれができますが、それは一か所に体圧がかかり、血流が阻害されて細胞が壊死するからです。
上図の下のように、寝姿勢(背骨のカーブ)を正しく支えた状態で、できるだけ一カ所にかかる圧力を分散した方が身体へのストレスが少なくなることは自明ですね。これが体圧分散です。
低反発ウレタンの登場で体圧分散の重要性が語られるようになった
NASAの宇宙開発の中で、宇宙飛行士の身体にかかるGを軽減するために開発されたヴィスコエラスティック・フォーム(一般的には低反発ウレタンと呼ばれます)が登場して以来、メモリーフォームと呼ばれるぐらい、身体の形に変形して密着度が高いものです。枕からマットレスまで、体圧分散性が良いので話題になりました。テンピュールやトゥルースリーパーに代表されるのが低反発ウレタンのマットレスです。
そして体圧分散図が一般化し、よく使われるようになったのです
これはボディドクターラテックスマットレスの説明ですが、このような図はしばしば目にしたことが多いかもしれません。低反発素材だけでなく、高反発素材を謳うマットレスなどもこのような説明をしています。たしかに体圧分散した方が身体には良いのです。
体圧分散だけではダメ、同時に正しい寝姿勢を保つことが重要
実は柔らかいマットレスを使えば体圧分散は改善します。その場合、寝姿勢が崩れるのが問題となります。腰が落ち込んだりすると、体圧分散は良くても腰が痛いということになりかねません。
低反発ウレタンだけは体圧分散は良いが、問題も多い
低反発ウレタン系のマットレスは体圧分散が改善するのですが、その一方で表面の反発力が少ないために寝返りがしにい、蒸れやすい、へたりやすいという問題を抱えています。
実際私どもではテンピュールのマットレスが2000年に日本へ入ってきたとき、真っ先に仕入れて使ってみました。身体の形どおりに変形するので、体圧分散は改善されましたが、寝返りが打ちにくいという欠点があり、すぐに取り扱いをやめた経緯があります。
弊害もあるので、眠りのプロショップSawadaでは低反発ウレタンマットレスをおすすめはしておりません。
低反発ウレタンは寝返りがしにくい
適度な寝返りは睡眠にとって必要なものです。寝返りをするには、マットレス表面にある程度の張りが必要です。低反発ウレタンは身体のカタチに沿って変形するために、逆に寝返りが打ちにくくなるのです。
低反発ウレタンは蒸れやすい
上の図でも判るように、体圧分散が過ぎると身体とマットレスの間に隙間がなくなってしまいます。ヒトは一晩に200~600ccの汗をかきます。それも多くが背中からの発汗です。湿気は行き場を無くして、蒸れて不快感が増大します。それを防ぐには吸湿発散に優れたベッドパッドなど、湿気を調節するしくみが必要です。
低反発ウレタンはへたりやすい
身体にそって変形するというように、低反発ウレタンは、変形の量が多いため、そこに身体から放出される汗や熱がくわわると、どうしてもへたりがはやくなります。
横向き寝の体圧分散は、さらにやっかい
さていままでの説明は、仰向き寝の場合です。横向き寝は体の凹凸がはっきりするために、体圧分散はさらにやっかいです。
硬い寝具で横向き寝をすると、肩(C)の部分に圧迫が強くかかり、腕がしびれたり、寝返りが増えたりとなります。薄いマットレスだと横向き寝で正しい寝姿勢を得ることができませんし、体圧分散に至っては非常に難しくなります。
横向き寝の場合はウッドスプリングを併用する
マットレス単体で横向き寝をうまくするのは難しいため、ウッドスプリングを併用して寝姿勢と体圧分散をすすめることをおすすめします。
体圧分散性能を向上させる、おすすめマットレス
ジェルトロン
ジェルトロンはミネラルオイルをベースにしたジェルを立方体構造にしたものです。知る限り最も体圧分散性能に優れています。特に下の画像にある二層式のタイプが最も体圧分散が良いものです。
中は空気なので、変形に伴って空気が入れ替わるという、極めて通気性が高い素材です。介護の現場でも、褥瘡(床ずれ)が起きにくいマットレスです。腰痛のお客様にも高い評価を経ています。丸洗いできるのも特徴です。
マットレス、オーバーレイマットレス、枕、座布団などがあります。
ラテックス・マットレス
天然ゴムを発泡して作られるラテックスフォームは、高反発と低反発の中間で非常にバランスの取れたマットレスです。しばしば正反発と呼ばれます。
体圧分散性に優れる一方で、寝返りも打ちやすい反発性も持っており、廃棄時に環境負荷が低いエコロジーなマットレスです。抗菌性や耐久性にも優れていますので、眠りのプロショップSawadaでは、主にラテックスのマットレスをおすすめしています。
厚手のラテックスフォームの中には5ゾーンや7ゾーンなど、肩の部分をソフトに仕上げたタイプもあります。
体圧分散だけでは、快適なマットレスは語れない
必読:自分に合うマットレスをどのように選ぶのか
マットレス選びの問題を整理してみました。
快適な寝床内温湿度は温度33℃湿度50%
敷寝具選びは、①寝姿勢の保持、②体圧分散と寝返りのしやすさ、③快適な温湿度のバランスです。ややもするとマットレスの素材だけの長所が取り上げられますが、この3つがバランスすることが重要です。特に温度と湿度の問題は、正しく説明されていないことが多いのです。
温湿度を調節するためには天然素材のベッドパッドが必要
実際にはマットレスだけでなく、上に敷く敷パッドとの組合せにより体圧分散や温湿度調整の性能が異なります。一人一人に合わせた選択が必要なのです。
あなたに合うマットレス選びは無料の快眠カウンセリングから
寝具を正しく選ぶには、カウンセリングが必要です。体格、体質、生活習慣、寝姿勢、気候や部屋の温湿度等によって変わります。眠りのプロショップSawadaでは無料のWEB快眠カウンセリングを提供しています。